2015年11月19日木曜日

柴田元幸氏が字幕を訳す

皆さま、こんにちは。ねこです。
先日、翻訳仲間に誘われて
青山ブックセンターでのイベントに
出かけてきました。

映画『写真家ソール・ライター 
急がない人生で見つけた13のこと』公開記念
柴田元幸トークイベント
http://www.aoyamabc.jp/event/saulleiter/

写真家を描いた映画について
日本語字幕を担当した大御所翻訳家が
映画の魅力や制作エピソードなどを
語ってくださるなんて、サイコーです!


柴田元之氏は、普段は字幕ではなく、
小説などを訳していらっしゃる方です。
なので、我々字幕翻訳者のように
SST G1というソフトを使って、
字幕を入れる部分を決める作業
(スポッティング)にはタッチせず、
タイムコードごとに区切られた
エクセルファイルを使って、
翻訳作業をされたそうです。

まずは柴田氏が全文訳を作り、
それに対して、字幕制作会社が
修正提案をしていくという形で、
何度もやり取りを繰り返しながら、
字幕を作り上げていったとのこと。

印象的だったのは、
"Well"という言葉の扱いでした。
写真家ソール・ライターは、
独特な話し方をする人で、
柴田氏としては、字幕の冒頭に、
「まあ」という表現を入れたいところが
たくさんあったとのこと。
しかし、制作会社はそれには反対。

結局、"Well"という音が終わったところから
字幕を出すことで、
映画を見ている人は、
「まあ」という言葉を聞いたのと同じ感覚を
味わえるという結論に至ったとのことでした。

この手法は、今後のインタビュー字幕などに
生かしていけそうな気がします。
とても参考になりました。

そして、今回のトークショーで
最も心に響いたことがあります。
それは、「字幕を作る時に、
このセリフの核は何か、
ユーモアなのか、辛辣さなのか、
そこを考えて言葉を選ぶ」と
おっしゃっていたことでした。

文芸翻訳の大御所は、
字幕を手がけても、
やはり一枚も二枚もうわてです。
決して文字だけを見ているわけではなく、
そこにあるメッセージ全体を
見ていらっしゃるのです。

これは、字幕翻訳を始めたころの私には
なかなかできないことでした。
つい、そこにある英単語を
日本語に直すことばかり考えてしまい
ギクシャクした字幕ばかり作っていました。

そこから十数年が経ち、
どうにか字幕翻訳を本業にしていますが
「このセリフの核は何か」ということを
十分に考えられていないことも
まだまだあるかもしれません。

あらためて初心に立ち返って、
心を込めて訳していきたいと思います。


ところで、今日は個人的な記念日です。
2002年のボジョレーヌーボーの解禁日に
字幕翻訳者になるための
トライアル試験に合格したので、
毎年、ボジョレーの日を「翻訳記念日」として
ひっそりお祝いをしています。


日にちで覚えようと思っても、
案外忘れてしまうものですが、
ボジョレーの解禁日なら、
必ずメディアが大騒ぎしてくれるので
いつも助かっています♪


<映画情報>
『写真家ソール・ライター
急がない人生で見つけた13のこと』
http://saulleiter-movie.com/
12月上旬、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開!


<翻訳学校情報>
日本映像翻訳アカデミー
http://www.jvtacademy.com/

12月17日(木)19:00~21:00 課外講座
「映画の予告編を楽しむ!予告編から学ぶ!
制作の第一人者が明かす予告映像の秘密」
http://www.jvtacademy.com/chair/extracurricular.php?id=467

※受講料1,000円でどなたでも参加できます