2019年10月22日火曜日

「即位」は英語で?

皆さま、こんにちは。ねこです。
大きなニュースがあった時は、
それをどう英語で伝えるのか
ちょっと調べておくと
何かと役に立ちます。

今日の「即位の礼」で
最も重要な単語は、
もちろん「即位」ですね。

enthronement

英語初心者さんにとっては、
「うわっ、長い。
こりゃ覚えられないわ」
という感じかもしれませんが、
実はこの単語、
3つに分解できます。

まず、en- という部分は
接頭辞と呼ばれるもので
「~の状態にする」
というニュアンスがあります。

en- と large で
enlarge(拡大する)
en- と rich で
enrich(豊かにする)

次は、throneという単語で
「王位、国王、王座」
といった意味があります。
「ゲーム・オブ・スローンズ」の
スローンです。

なので、enthrone
「王位に就かせる」
という意味になります・

最後の -mentは、
接尾辞と呼ばれるもので
これがくっつくと名詞になります。

develop と -ment で
development(開発)
manage と -ment で
management(管理)

そんなわけで、この3つが一緒になって
enthronementになると
「王位に就かせること」
すなわち「即位」になります。

長い単語も、こうやって分けると
覚えられそうな気がしませんか。^^

また、上級者さんは、この機会に、
ニュース記事の読み比べを
してみてくださいね。

こちらは、Japan Timesの記事。
https://www.japantimes.co.jp/news/2019/10/22/national/japanese-emperor-begins-ceremonies-proclaim-enthronement-world/#.Xa7VNFQzaM9

こちらは、CNN。
https://edition.cnn.com/2019/10/21/asia/japan-enthronement-emperor-intl-hnk/index.html

こちらは、BBCです。
https://www.bbc.com/news/world-asia-50120563

例えば、十二単が、
英語でどう表現されているかを見ると、
Japan Timesでは、
a layered court kimono
BBCでは、
12 layers of robes
しかし、CNNでは、
a patterned, white robe だけで
layerという表現は使われていません。

また、天皇陛下のお言葉の英訳も
それぞれ違っています。
BBCは独自の訳ではなく、ロイターの訳を引用。
"I swear that I will act..."という表現が使われています。

Japan TimesとCNNは、同じ訳で、
"I pledge hereby that I shall act..."という表現。

こんなふうに読み比べながら、
じゃあ、自分はこのニュースを
どんな単語を使って
英語で説明しようかなと
考えてみてくださいね。

富士山初冠雪と虹について書かれた
この短い記事もよかったなぁ。
https://www.japantimes.co.jp/news/2019/10/22/national/enthronement-rainbow/#.Xa7dMlQzaM8

<関連記事>
"abdicate"
http://interesting-languages.blogspot.com/2016/07/abdicate.html

2019年10月19日土曜日

字幕にびっくり!『ブルーノート・レコード』

※これは本作の字幕の批判ではなく、本作と一般的な字幕との違いについての考察するもので、日頃、字幕ルールに悩んでいる駆け出しの翻訳者さんたちを応援するための記事です。

皆さま、こんにちは。ねこです。
映画『ブルーノート・レコード』
満喫してきました!

映像だけでなく、
昔の写真にインタビュー音声を
重ねた部分もけっこうあり、
特に写真の一部が切り取られて、
レコードジャケットになっていく様子を
描いた部分などは、
ものすごくゾクゾクしました。

でも、今回、字幕を見ていて
「あれ?」と思う部分が
たくさんありました。
いわゆる普段、字幕翻訳の仕事で
指示されているフォーマットとは
大幅に違っていたからです。

もちろん、クライアントや案件ごとに
少しずつフォーマットは異なりますが
通常、翻訳者は受注時に、
こんな感じの指示書を受け取ります。
(※以下は一部抜粋したものです)

横字数 16文字
縦字数 12文字
字幕間 2フレ
イン点 音が始まるところから2フレ戻し
アウト点 音終わりから6~8フレ延ばし
斜体 電話、無線の声、場内アナウンス、試合の実況アナウンス
引用 “”(全角)
ナカグロ ・半角
三点リーダー 全角1マスに収める
アルファベット 全角
コロン :全角
かぎかっこ 「」全角
(※「2フレ」「6フレ」などの「フレ」というのは「フレーム」の略で、映像のタイプによって、30フレーム=1秒だったり、24フレーム=1秒だったりします)

今回の作品で「おや?」と思ったのは
例えば次のような点でした。
どれが「標準」と書くのは
語弊があるのですが
便宜上、<標準>と<今回>
という表現を使って列挙してみます。

<標準>
10文字程度なら、途中で改行しない。

<今回>
10文字程度でも2行になっている字幕が多い。

・・・・・

<標準>
誰かの発言の引用は
ダブルクォーテーションを使う。

<今回>
発言の引用に、かぎ括弧が使われている。

・・・・・

<標準>
作品名のあとに「を」や「が」などの
助詞がつく場合は、同じ行に入れる。

『○○○○・○○○』
 リリースした

<今回>
作品名の直後で改行され、
2行目の頭に助詞が来ている。

『○○○○・○○○』
 リリースした

・・・・・

<標準>
1枚の字幕に入れるのは、基本的に
1人の話者の発言のみ。

<今回>
同時に話しているわけではなくても
前の話者の発言と別の話者の回答が
同じ字幕に入っている。

 ○○○○だったよ  ← 1人目
 そうなのか     ← 2人目

・・・・・

<標準>
どんなに長い発言でも
字幕2枚以内で一旦文章を終え、
体言止めなども混ぜつつ、
どうにかして全体の流れを作る。

<今回>
3枚以上にわたって文章が続く字幕がある。

・・・・・

<標準>
字幕を表示するタイミングを
1フレーム(24分の1秒や30分の1秒)という
細かさで厳密に設定する。

<今回>
発言が終わったあとも
少しの間、画面に字幕が残っていたり
逆に字幕が早めに出たりする部分がある。

・・・・・

テレビや映画のネット配信をする
某社の案件などは、納品後に
字幕の品質管理をする担当の方から
「ねこさん、1~2フレ早く
字幕を出しちゃってる部分が
5か所もありましたよ。
今後気をつけてくださいね」と
お叱りを受けることもあります。

上に列挙したようなことは、
翻訳学校でも、実際の業務でも
常に口うるさく言われていることなので
普段「あれダメ」「これダメ」と
言われていることが
映画館のスクリーンに
次々と出てきてびっくり!

でも、それと同時に思ったのは、
おそらく字幕関係者以外の人は
何の違和感も覚えずに
普通に楽しめただろうなぁということ。

字幕のルールというのは
字幕の大先輩たちが、
研究に研究を重ねた上で
「こうすると読みやすいだろう」と
編み出してきたものなのだと思います。
まあ、1フレ、2フレという指定は
もう少し最近のものなのかなぁ…。

字幕翻訳の学校に通っている
翻訳者の卵さんたちや
駆け出しの翻訳者さんたちは
この1フレ、2フレという厳密な指定や
「3枚以上の字幕は絶対にダメです!」
というルールに、
ものすごく苦しんでいるかと思います。
(私もそうでした)

この『ブルーノート・レコード』は
そんなストレス解消に
ぴったりかもしれません。

1フレ、2フレどころか、
15フレぐらいのズレなんて関係なし。
(15フレって、たったの0.5秒です)
3枚字幕もありで、
文章が倒置で終わってても関係なし。

いいじゃん、これで!

そう思って一旦スッキリして、
また、せっせと1フレ、2フレの
ズレを指摘されないように
うんと耳を澄ませて
頑張ってスポッティングしましょう(笑)

多分、字幕業界のスタンダードは
そうそう変わらないと思うので、
反旗を翻すよりも、
慣れちゃった方が得です。
8ボタンマウスなどを活用して、
業務の効率化をすると
ラクになっていきますよ。

ちなみに、ねこは、頭を空っぽにして
黙々とSSTでスポッティング作業をするのが
大好きです。
なんだか瞑想をしてるみたいな気分だなぁ…と。

翻訳者の皆さん、
お仕事頑張りましょうね♪

<関連記事>
ハコ切り天国
http://interesting-languages.blogspot.com/2017/08/blog-post_16.html

柴田元幸氏が字幕を訳す
http://interesting-languages.blogspot.com/2015/11/blog-post_19.html


2019年10月11日金曜日

極めて特殊な埼玉ガイド依頼

皆さま、こんにちは。ねこです。
ToursByLocalsという
マッチングサイト経由で
通訳ガイドをやっています。

通常は、自分の定番コースを
いくつかネット上に出し、
それを販売しているのですが、
問い合わせメッセージをいただき、
普段は扱っていないコースを
ご案内することもあります。

その極めて特殊な依頼が来たのは
6月半ばのことでした。

I have two kids adopted from Saitama and I am interested in a day tour of Saitama, including the hospital where they were born.
(訳:埼玉から養子に迎えた子どもが2人います。子どもたちが生まれた病院も含め、埼玉の一日観光を希望します)

読んでしばしフリーズ。
これは、ちと重いぜ。。

一旦、深呼吸し、しばらく考えたあと
「ぜひ、お手伝いさせてください!」と
明るい調子でお返事し、詳細を尋ねました。

お子さんは15歳の男の子と
13歳の女の子。
どちらも、X市のZ産婦人科で誕生。

ところが、教えてもらった情報をもとに
所在地を調べようとしたところ、
Z産婦人科は、何年か前に取り壊され、
その場所は駐車場になっていました。

ママ(依頼人)は、
すぐには信じがたかったようですが
何度かやり取りをする中で、
「それでも、その街を子どもたちに
見せてあげたい」という結論に至り、
埼玉観光を決行することに。

10月上旬、まずは下見。
事前にGoogleマップで
立ち寄れそうな場所をチェックし
埼京線に乗って、X駅へ。

児童館やコミュニティセンター
図書館、郵便局、銀行、
消防署、産婦人科のあった場所も
しっかり撮影。

ついでに、近隣で産婦人科についての
聞き込み調査もしてみました。
しかし、みんな、
「そういえば、何年か前まではあったけど
気づいたら、なくなってたのよねぇ」
という感じ。

同じ名前のZ病院にも尋ね、
事情も話しましたが、
事務員さんはどこかに電話をかけて
確認をしたのち、
「残念ですが、うちとは、
まったく関係はないんです」。

唯一、古いお蕎麦屋さんの
おじいちゃんが、
「昔、よくZ産婦人科に出前に行ったよ」
と懐かしそうに話してくれました。

その夜、下見で撮った写真を
Dropboxに入れて、ママに送信。
「郵便局から自分宛に
ハガキを出させるなんていいかも」と
ママの方も、いろいろ
楽しみになってきた様子。

ツアーは通常の都内観光1日と
埼玉観光1日の
2日に分けてのご案内です。
都内のホテルに迎えに行くと、
ニコニコと同じ笑い方をする
よく似た4人が現れました。

楽しい都内観光を終え、
翌日はいよいよ埼玉観光。

X市に到着し、児童館のアスレチックで
無邪気に遊ぶティーンエイジャー。
それを楽しそうに撮影するパパ。

郵便局では、ハガキを
出すだけじゃなくて
記念切手なども山ほど購入。

お蕎麦屋さんでは、
店主のおじいさんも一緒に
記念撮影。

そして、産婦人科のあった駐車場でも、
みんなニコニコ顔。
パパは娘さんに
「どうだ、ここで生まれたんだっていう
エネルギーを感じるか~?(笑)」と言って
からかってみたり。

でも、気になったのは、
ママがずっと、
「誰か先生を知っている人が
いないかしら?」と
言い続けていること。

なので、たばこ屋さんの
おじいちゃんにも
尋ねてみました。

店主:「Z病院に聞けば、分かるんじゃないかな」
ねこ:「いえ、この間、うちとは関係ないって言われたんです」
店主:「そんなわけねーよ。だって、院長たち、兄弟だぜ」

う~~~む。。。

ママもパパも、子どもたちも
Z病院に行きたいと言うので
みんなで寄ってみることにしました。

Z病院の受付で、
Z産婦人科について尋ねると、
事務員さんは、今回も
「うちとは関係ないんです」の一言。

しかし「実はこういう事情で来たんです。
施設に預けられたあとも、
院長先生が週末に自宅に連れていって
面倒みたりしていたこともあったそうなので
せめて、家族写真だけでも渡して
今、幸せに暮らしてますと
伝えることができれば…」
と伝えると、
事務員さんたちの表情が一変し、
少し待つように言われました。

しばらく待つと、スーツを着た
硬い表情の男性が出てきて
「何年か前の住所は分かるので
郵便を送ってみることはできます。
転居していたら、届かない可能性も
ありますが、それで良ければ」と。

その場で、ママが手紙を書き、
私が日本語に訳し、写真と一緒に
スーツの男性に託して、
お礼を言って病院を出ました。

驚いたのは、その後です。
なんと、そのスーツの男性が
追いかけてくるではありませんか!

「個人情報の問題もあって
さっき、院内では言えなかったんですが
Z産婦人科の院長は、高齢だけれど
定年後もお元気で、先月も、
こちらの病院にお見えになりました。
なので、この写真と手紙は
確実にお届けできるはずです!」と。

その後、ニコニコ顔の4人家族は
埼京線のX駅の切符を記念に持ち帰り、
JR駅名キーホルダーも買って
ニコニコ顔で帰っていきました。

・・・・・

「ガイドの仕事に下見は必須」
とはいえ、今回のケースは
本当に特殊です。

他のガイドさんだったら、
依頼を断っていたでしょうか?

それとも、あっさり
付近の観光をして
無難に終えていたでしょうか?

それとも、ねこのように、
自分も家族の一員になったつもりで
トコトン付き合っていたでしょうか?

ここまでやるのはバカだと
思われるかもしれません。
でも、ねこは、
つかの間、5人目の家族として
埼玉の街を一緒に
ニコニコ歩けたことを
心から嬉しく思っています。

(埼玉県の花、サクラソウがデザインされたマンホールを囲んで記念撮影)

(追記)
コーヒー豆、紅茶、クッキー、チョコレートなどの
お土産をたくさんいただいた上に、
カードも、いただきました。
自宅に帰って、封筒を開けると、
一生懸命書いた日本語のメッセージと一緒に
福沢諭吉さんが入っていました。
よーし、お金貯めて、
いつか会いにいくからねっ!

2019年10月2日水曜日

"How dare you!" ~環境保護について考える~

皆さま、こんにちは。ねこです。
10月になったというのに
びっくりするほどの暑さですね。
「暑いなぁ」と思うたびに、
先日、国連で環境保護を訴えた
スウェーデン人のトゥーンベリさんの言葉が
頭の中で反響します。

How dare you!

dareという単語は、
「あえて~する」などと訳されます。
勇気や大胆さを意味することもありますが
今回、彼女が意図したのは、
「よくも、そんな恥ずかしい行動を
あえてする大胆さや勇気がありますね」
といった否定的なニュアンス。

”How dare you say such a thing?”
(よくもまあ、そんなことが言えるわね)
などと文章を続けることもありますが
How dare you!だけで止めると
さらに強烈なニュアンスになります。
日常会話で耳にすることは
ほとんどありません。

でも、それほど強烈な言葉で
訴えかけなくてはいけないほど
今の地球の環境は
マズいことになっているんだと思います。
世界各国でのハリケーンや
台風の被害を見ていても、
今すぐに、何かしなくてはいけないことは
明らかです。

「自分ひとりが何かしても
何も変わらない」と
世界中の人が思っていたら
何も変わりません。

でも、数十億人の人が一斉に
「何とかしなくちゃ」
と思って行動したら
大きな違いが出るはずです。

なので、ねこは、
自分のできることから
始めようと思います。
こうしてブログを書き、
SNSなどで友達に呼びかけるのも
草の根運動の1つです。

その他、やっていることはこちら。

・エアコンを控えめに利用し、衣類でも体温調節をする
・エアコンを使う時はカーテンやドアをきちんと閉める
・歯を磨いている時、髪を洗っている時、水を出しっぱなしにしない
・サランラップの使用を極力減らし、お皿でフタをするなどの工夫をする
・車以外の選択肢がある場合は自転車や公共交通を利用
・極力、レジ袋をもらわない
・名刺を必要以上に配らない
・ごく少量の急ぎの洗濯物なら手洗いして洗濯機で脱水だけする
・急ぎでない限り、Amazonの注文をまとめる(例えば、買いたい本がある時に一緒に消耗品などをまとめて注文)
・環境に配慮している会社の商品や株を買って応援する
・選択肢があるなら燃費のいい方の飛行機に乗る(←マニア向け:笑)
・人の迷惑を顧みず観葉植物をプレゼントする(笑)
・「この行動は環境にとってどうなんだろう?」と自分の行動を意識する

環境保護を呼びかけるのは
すばらしいことなのだけれど、
案外、勇気が要るものです。
なんていうのかしら、
「真面目な優等生」扱いをされて
陰で笑われるんじゃないかとか
いまだに、そういうことに
怯えてしまう自分もいます。

でも、この暑さはたまらないので
真剣に訴えかけることに決めました。
ただ、いい大人なので、目を三角にして
How dare you!と叫ぶつもりはありません。

ニコニコ笑顔で、
「真似したくなる環境保護活動」を
ちょこちょこと紹介していければと
思っています。

10月に10月らしい
心地よい秋風が吹く環境を
取り戻しましょうね♪