2020年12月4日金曜日

写真とジャズ、ルディ・ヴァン・ゲルダーのこと

皆さま、こんにちは。ねこです。先月、タワレコから発売された『Sunday Afternoon NYC HighNote & Savant Jazz Sounds From Van Gelder Studio』というCDのジャケット写真を担当させていただきました。

常に本物の写真家を間近で見ていて、その仕事の過酷さを知っているので、写真を本業にしようと思ったことはないのですが、どういうわけか不思議と、写真とジャズが一緒になる場面で、ステキなご縁をいただくことがあります。語学のお話ではありませんが、何かが起きる時ってこんな感じ…ということを書いてみたいと思います。

アマチュアフォトグラファーの私に、最初にCDジャケットの撮影を依頼してくれたのは、ジャズ・フルートの小島のり子さんでした。日本酒をテーマにしたCDで、「つくしのこ」という居酒屋さんをお借りして撮影。お店の1階でも、2階でも、数百枚の写真を撮ったのですが、ふと「階段でも撮ってみようか」と言って撮ったわずか数枚の1枚がCDジャケットになりました。2009年のことです。


自分が撮った写真がCDになったことで、すっかり有頂天になり、ある晩「いつか、写真展でもやってみたいなぁ」と思いながら眠ると、翌日、バーベキューパーティーで、その日に知り合った人から「新宿のバーで写真展ができるので、やってみませんか」と誘われました。

そして2010年、あっさり写真展が実現。CDジャケットの撮影の相談に乗ってくれたニューヨーク在住のジャズ写真家、常盤武彦氏がちょうど来日中で、そのバーに足を運んでくれました。

翌年6月、モントリオール国際ジャズフェスティバルに、常盤氏のアシスタント(荷物番)として同行。フォトグラファーたちが、カメラやレンズなど、山ほど機材を抱えて走り回り、わずかな時間で、ものすごいプレッシャーを感じながら必要な写真を撮っているという過酷な現場を見て、「んー、ちょっと写真家に憧れてたけど、これ、絶対向いてないわ」と確信。「プロじゃないんだから、好きなものだけを楽しく撮ろう」という楽しい決意を固めます。

その年の9月、ニューヨークを訪れ、ルディ・ヴァン・ゲルダー(RVG)というレコーディングエンジニアの取材に同行。ルディさんは、ジャズ界の神様のような人なのですが、何も知らない私は、呑気に常盤氏の背後で、鳥の真似をしてルディさんを大笑いさせていました。あとから常盤氏に聞いたところによると、「ルディがあんなに顔をほころばせて大笑いしているのなんて今まで一度も見たことがなかった」とのこと。

こちらは、常盤氏が撮影したルディさんの写真。実際は、もっともっと顔をくしゃくしゃにして笑っていたのですが、そういう瞬間にはシャッターを切っていなかったそうで。でも、この写真も、よーく見ると、結構、笑いをこらえているのがわかります。


こちらは、常盤氏とルディさんがカメラについて話しているところ。ルディさんは、写真が趣味で、壁に貼ってある鳥の写真は、なんとご自身で撮影されたものなのだとか。


そして、2012年、常盤氏とニューヨークのルーズベルト島を訪れ、風景撮影を楽しんでいると、シャッターを切った瞬間に、カモメがバサッ!


「わっ、まるでルディさんが撮ってた写真みたいだ」とちょっと興奮気味で、トラムウェイに乗り…


こちらの写真を撮影。


それが、2020年11月、ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音を集めたCDのジャケットになりました(驚)。天国にいるルディさんとお話ができるなら、「あの時、アシスタントとして行って、鳥の真似してた私の写真が、ルディさんのCDのジャケットになったんだよぉ!」と伝えたいですね。そしたら、また、顔をくしゃくしゃにして笑ってくれるかな。


今でも、好きなものだけを楽しく撮ろうという気持ちを大切に撮影をしています。ただ、写真への想いは、以前にも増して強くなっています。夜明け前から三脚を担いで走り回るのは日常茶飯事。そして、夕方も、オレンジからピンク、紫、濃紺に変わっていく空を眺めながら、「ひゃーっ」「うひーっ」と、よく分からない奇声を発して撮りまくる日々(笑)。さあ、明日は何が撮れるかな。


写真講座に挑戦

ルディ・ヴァン・ゲルダー 〜インパルス・イヤー、クリード・テイラーを語る〜
(※常盤氏によるJazz Tokyoの記事)