2022年10月20日木曜日

絵本翻訳:言葉の壁を乗り越えて

皆さま、こんにちは。とても長い時間をかけて翻訳に取り組んだ絵本が、今年8月、ついに出版されました。打診をもらったのが昨年の10月18日。ほぼ10ヵ月かかっての出版です。

物事について「大変だった」と苦労話をするのは、あまり好きではありませんが、この絵本翻訳は、いろんな意味で大変で、そして、たくさんの学びがありました。

パソコンで原文のデータをもらい、紙の本を受け取った時点では「絵本だし、字数も少ないし、気分が乗ればあっという間に訳せるだろう」とかなり軽く考えていたのです。ところが、いきなり大きな壁に直面しました。最初の一文がこちら:

I wish you dreams and aspirations, to spread your wings and reach for the stars.

えっ? aspirations? 子ども向けの本なのに、なんか単語が難しいんですけど…。

英和辞書を引くと「熱望、志望、待望、抱負、向上心、大志」などの訳語が並んでいます。

そのすぐ後にも、I wish you imagination and creativity などという表現が出てきます。「想像力」と「創造力」? 絵本用にひらがなで書くとしたら、どっちも「そうぞうりょく」になってしまいます。他にも…

grit and resilience
peace and tranquility
success and prosperity
love and affection

ひゃー、これをどうやって子ども向けに訳せばいいの!? 「あい と あいじょう」なんて訳じゃおかしいし、どうにもこうにもしっくりくる日本語が見つかりません。この絵本の作者のマイケル・ウォンは、長年の友人でもあるので「子ども向けなのにハイレベルな単語が多くて戸惑っている」と本音を打ち明けると、「これは、読み聞かせの中で、親が子どもに単語の意味を教えたりすることも意図して作ってる。だから日本語訳も、大人向けの訳語を使ってもいいよ」とのこと。

とはいえ、「へいわ と せいじゃく」に「せいこう と はんえい」って訳、どうなんだろう? 自分が親だったら、そんな訳語を使った絵本、買うかしら?

かなり悩みながら、とりあえず全文を訳し、英語のわかる友達に相談をしてみました。すると、目から鱗の解決策が!

「ひらがなだけで訳すのは無理があるから、漢字にルビを振ったら?」という友達のひと言です。突然、目の前にぱーっと光が差し込んできました。実際に、漢字にして、ルビを振ってみると、今までひらがなだらけで、のっぺりとしていた原稿が急に美しく引き締まった感じがしました。

その後も、彼女と彼女のご家族の多大な協力を得て、しっくりこない表現を徹底的に検討し、単語だけではなく、その文全体が伝えるメッセージを訳すという考え方で、英文からは思いつかないような日本語表現を思い切って使うという決断もしました。

さらには、作者が雇った3人の日本人の校閲者さんたちと、何度もコメントのやり取りを重ね、本当に長い時間をかけて日本語訳が完成しました。最初の一文は、次のようになりました。(※絵本ではすべての漢字にルビがついています)

あなたに夢と志を。

翼を広げ 星まで飛んでいけますように。

「英文は1文なので、日本語訳も1文にできないだろうか?」と作者に言われましたが、これについては、リズムや読みやすさを考えて、2文の方が適切という判断を下しました。

また、句点(、)と読点(。)をどうするかということについて、面白い気づきがありました。句点の代わりに半角スペースを空ける「分かち書き」というスタイルでいくのは最初から決めていたのですが、読点は不要と思っていたのです。

ところが、最終チェックの段階で、絵の中に日本語の文字が並んでいるのを見た時、ハッとしました。読点(。)を付けないと、1行目と2行目が1つの文に見えてしまうのです。これは、翻訳原稿の中で1行ごとに、英文、日本語訳、英文、日本語訳…という順に並べていた時には気づかなかったことでした。慌てて、全ての文末に読点を付けました。

これ以外にも、ルビをどう入れるか、フォントをどうするか、日本語版の表紙をどうするかなど、ちょっとした問題が次から次へと出てきました。こちらについては、長年お世話になっているデザイナーさんの力を借りて解決しました。

元気の出る言葉がいっぱい詰まったこちらの絵本、小さなお子さんだけでなく、大人へのプレゼントとしてもオススメです。シドニーから発せられた温かい応援の気持ちが、日本の皆さんの心にも届きますように!

いろいろ力を貸してくれた西村英津子さん、デザイナーの森恵さん(Mori Craft)、そして、校閲を担当してくださった方々、そして、このような貴重な機会をくれた友人のマイケル・ウォンさんに、心から感謝申し上げます。


<余談>
かなり前に、このブログを書き始めていたのですが、お知らせがすっかり遅くなりました。夏の終わりぐらいから、いろいろ後回しにしてしまうクセがついてしまったのですが、心を入れ替え、仕事も日常生活もテキパキと効率良くやっていこう!と心に誓ったところです。

2022年8月23日火曜日

【VRWC】月末、一緒に5キロ歩きませんか

皆さん、こんにちは。ねこです。2020年の秋に走り始めてから、あちこちに旅ランに行ったり、ランナー向けのイベントに顔を出したりと、どっぷりランの世界にハマっています。ランナーの皆さんが、40代でも、50代でも、60代でも、青春真っ只中という感じの「熱いヤツら」なのが自分の性格にピタッと来ちゃったというのが大きな要因だったりもするわけですが、その一方で、走らない友達との気持ちの距離が少しずつ離れてしまうことが気になっています。

以前は、一般的なSNSにも旅ランの報告を載せていましたが、「10キロ走りました」「21キロ走りました」という情報を出したら、何人か微妙な反応をした人がいたので、「走った」ということを書かずに観光地の写真だけ投稿するようになりました。そして、次第にランナー専用SNSへの投稿が増え、古くからの友達がたくさんいるSNSからは離れがちに…。

でも、それって何だか寂しいぞ!と思ったんです。そもそも、ねこは何も変わっちゃいません。この1年半で急に強靱なスーパーキャットになったわけでもなく、ただ、ゆっくりと長い距離を移動するようになっただけ。いまだにすぐ疲れて座りたくなるし、床があれば、ゴロンゴロンです(笑)。

ただ、自分の足で移動できる距離が増えたことで、ちょっぴり人生が変わりました。バスの本数が少ない観光地で、「そっか、3.7キロなら歩いちゃおうかな」という選択肢ができます。電車が止まってしまった時、バスを待つ長蛇の列を横目に「歩いちゃうもんね!」と勝ち誇った気分で駅を去ることもできます。

「一緒に走りましょう」と言うつもりはないけれど、あらためて皆さんにウォーキングのお誘いをしてみたくなりました。毎月1回、いつもより長い距離を歩いてみませんか。

Vitality Run&Walk Challengeという、オンラインのイベントがあるんです。
https://vrwc.runtrip.jp/

ウォーキング部門は5キロ、10キロ、15キロで、ランニング部門は5キロ、10キロ、21キロ(ハーフマラソン)。5キロのランニングの制限時間は1時間ですが、5キロのウォーキングの方はなんと16時間! 16時間あったら、いっぱい寄り道しながら、木陰でおやつを食べたり、写真を撮ったりしながら歩いても十分間に合います。

例えば、春日部近郊の場合なら、一ノ割駅から大池親水公園で水鳥さんに会い、キオラコーヒーでくつろいで、シャトレーゼでおやつを食べ、頑張って豊春駅まで歩くと、おおよそ5キロです。都内の例では、浅草駅からてくてくてくてく銀座まで歩くと、おおよそ5キロです。

気軽に歩ける距離ではないけれど、歩きやすい靴を履いて、気になるカフェで休憩しながら、のんびりお散歩したら、結構楽しめるんじゃないかしら? Googleマップが表示する徒歩での所要時間は1時間ちょっとです。

このバーチャルイベントに参加してみたいなと思った人はこちらのリンク先を参考に、イベントに参加してみてくださいな:https://support.vrwc.runtrip.jp/hc/ja/articles/4414509488921

何の計測もしないで、ただ、5キロのウォーキングに挑戦することもできるけど、スマホに届く完走証/完歩証がなんだか妙に嬉しかったりなんかして♪

今月末のスケジュールは以下のとおりです。

2022/08/27(土) 05:00〜2022/08/28(日) 21:00

また、このバーチャルイベントの開催に合わせて、全国14か所の会場で、REAL VRWCという形で、ゴールテープを用意した人たちが待っています。8月の開催情報はこちら:
https://note.com/runtrip/n/n5c3dafa11c60

もし、お近くで足を運べるところでREAL VRWCが開催されるようなら、ぜひ、会場から5キロの距離のところから、てくてく歩いてゴールしてみてくださいな。ランナーさん、ウォーカーさん、いろんな方たちと知り合えるチャンスです♪

P.S. ねこが尊敬する歴史上の人物は、伊能忠敬さんと松尾芭蕉さんです。いっぱい移動するのが好きなのも、これで納得してもらえるかな(笑)

2022年8月17日水曜日

ゆっくり富士登山 Day 3

皆さま、こんにちは。ねこです。富士登山3日目。こんな素晴らしいご来光を見るまでと、その後の下山の様子を詳細にお伝えしますね。


前夜、19時の消灯後、眠れないなぁ…と思いながら、いつの間にか夢の国へ。そして、深夜にとんでもない頭痛で目を覚ましました。しっかり高度順応をしてきたものの、やはり睡眠中に呼吸が浅くなったことで、酸素不足に陥ってしまったようです。

とりあえず体を起こして、深く深く呼吸して酸素を取り入れるも全然効果なし。気持ち的には頭痛薬を飲みたいけれど、体からの危険信号を感じなくさせるのは危険かもしれないので、とりあえず我慢。

ううう…。痛い、痛い、痛い。ゴロンゴロンゴロン。

はっ、ミネラルウォーターがほとんど残ってない!! 高山病を防ぐ決め手のひとつが水分なのに、これは非常にマズい状況です。普通のホテルと違って水道はないし、消灯後は外出禁止でしっかり施錠されていて外の自販機にも行けません。

大ピンチ!!と思っていたら、たまたま山小屋のスタッフのお兄さんがトイレに行くために目の前を通りました。「すっ、すみませんっ!! 水を売っていただけませんか?」とお願いしたら、深夜にもかかわらず、快く500mlのボトルを売ってくれました。お兄さん、マジで命の恩人ですっ! その後、水をちょこちょこ飲み、迷った末、バファリンも1錠だけ飲んだら、すーっと眠りに落ちました。

次に目が覚めたのは午前3時過ぎ。頭痛は消え、元気いっぱい! さあ、撮影だ! フリースやらネックウォーマーやら、できるかぎりの防寒をして、いざ外へ。温度計は4℃。うん、好みの気温♪ 山小屋のスタッフさんたちは、焚き火や温かい飲み物を用意しています。



3:50。山口屋さんの前では、夜を徹して登ってきた人たちが、ご来光を見るための場所取りを始めました。

見下ろすと、山頂を目指す登山者の列が…。
1つ1つのヘッドライトに、1人1人の富士登山のドラマがあるんだなと思ったら、すでに涙腺がかなりヤバいことに(笑)


さて、今日の日の出時刻は4:56。


こちらは5:00の空模様。あたりに立ちこめる諦めムード。隣でずっと一緒に写真を撮っていたおじさんが「じゃあ、僕はそろそろ行きますので」と挨拶をしてきました。


「もう少し待ってれば必ず出ますよ」と自信満々に引き止める私。長年、朝日を撮り続けているので、これは一発逆転があり得る!という不思議な確信があったのです。

5:06、ほら来た。

5:10、もう一声!


5:11、あざーすっ!


一度は諦めて下山しようとしたおじさんと、「出たー!! 出たー!!」と泣きながらハイタッチです(笑)。かなりの人数の登山者が下山していく中、辛抱強く待った人たち、ほんと、良かったね。


さて、山頂でラーメン!


ラーメン食べながら見える景色はこんな感じ。贅沢すぎる!


さて、荷物をまとめて下山しましょう。6時までにチェックアウトって、下界では聞いたことないですよね(笑)。ご来光の後に、お鉢まわりをする宿泊客は、ザックを置かせてもらって、身軽な格好で散策に出かけることも可能です。

6:30、下山開始。八合目までは、須走ルートと吉田ルートは同じ。


この現実離れした光景! 「あれ? うっかり天国に来ちゃったのかな?」と思ってしまいます。


あのでこぼこな感じは、八ヶ岳連峰じゃないかしら。


絶景すぎて言葉を失います。


吉田ルートの五合目までの下山は、おおよそ4時間と言われていますが、もったいないので、ゆっくりゆっくりゴミ拾いをしながら歩きました。


富士登山では、長い長い下りで膝を痛めてしまう人が多いのだとか。登山者の皆さん、それをよく知っているようで、歩幅を小さくしたり、まっすぐではなくジグザグに歩いたり、少しの間、後ろ向きに歩いたり、頻繁に休憩したり、いろいろ工夫をしていました。


こんな絶景が見られるのに、走って降りちゃもったいないでしょー! 下山したら暑いんだから、できるだけ雲の上にいたい気分(笑)


7:00。8月なのに、こんな服装です。ウルトラライトダウンはザックにしまいましたが、フリースは着ています。寒くはないものの、荷物を軽くするために、レインウエアの下も履いたまま。靴に小石が入るのを防ぐため、ゲイターは必需品です。


下っても下っても雲の上。


7:45、ようやく分岐です。


7:50、下江戸屋さん。


まるで天国にある標識。


温泉街の湯気に見えてくる(笑)


8:45、地図を見て、ゆっくりしすぎてたかも!と気づく。


こちらは富士山で働く人たち。下山道では、時々、ブルドーザーやショベルカーが通ります。


9:00、まだ雲の上。


9:30、ええと…、五合目の登山口まで121分ですと!?


10:00、七合目トイレ。実は予習不足で知らなかったんですが、下山道には、飲み物や食べ物を買える場所が全然ないんですね。登りが山小屋パラダイス状態で、いつでも何でも買えたので、下山道のアトラクションのなさに愕然。。


うーん、山小屋のベンチに座って、コーヒー飲みたいよぉ!!と思いながら、ひたすら歩を進めます。

10:20、森林限界より下に来たようで、周辺に緑が増えてきました。こちらは落石から登山者を守るシェルターです。


外側も歩けますが、せっかく作っていただいたので、中を歩きました。少し立ち止まって休憩したり、何かを食べたり飲んだりするのも、この中の方が安心ですね。


10:45、登山者や観光客を運ぶ馬の駅みたいなところに出ました。疲れた顔をしていたら、「まだまだ遠いから乗っていきなさい」と誘われたので、背筋を伸ばして、歩調を速めました。


11:00、六合目の指導センターのところまで戻ってきました。初日に夜景撮影をした場所です。


これから登る人、頑張って!


五合目の登山口に向かう皆さんは、指導センターの方に歩いていきますが、私は星観荘に、三脚などの不要な荷物を置かせてもらっているので、吉田口方向に下ります。トレランの皆さんが時々、通りかかりました。


11:30、星観荘到着。気持ち的には、ここで、ほぼ下山終了という感じです。


美味しい牛丼、お米一粒残さず完食しました!


12:30、五合目の登山口に向けて再び歩きだします。


13:00、登山口に到着しました。6:30スタートだったので、経過時間だけで言うと、6時間半!?(笑)。


山頂で出しそびれた郵便を出し、お土産を買い、16:00に予約したバスを14:00に変更して、新宿バスタに向かいました。めでたし、めでたし。


<旅の予算のまとめ>
新宿から吉田口五合目のバス(往復) 5,300円
星観荘 1泊2食付き 9,000円(素泊まりは6,000円)
山口屋 1泊夕食付き 7,000円
豚汁(山頂)800円
ラーメン(山頂)1,000円
(その他、コーヒーやミネラルウォーターなどの飲料代が1本400~500円)

**********

今回の登り方は、年配の方や体力のない方でも、あまり無理なく登れるスケジュールです。ただ、日程が長くなる分、計画の段階で天気予報に悩まされます。富士登山のガイドブックを見ると、七合目か八合目で1泊するか、山小屋には泊まらず日帰りでサクッと登ってしまうのが一般的なようですね。

それにしても、富士山、すっかり気に入ってしまいました。登頂する以外の楽しみ方もありそうなので、いろんなシーズンに訪れてみようと思っています。真冬にチェーンスパイクを履いて、雪を踏みしめて六合目の佐藤小屋まで平坦な道を歩くのが楽しみです!

また、登山指導センターで7月と8月だけ働くということもできるのだとか。来年の夏も暑そうだし、英語が話せるスタッフは重宝されるらしいし、そういうのもアリかなぁ…。


(追記)
今回、実際に「登ってみよう」という決め手になったのは、「登頂しなくても絶景が楽しめる」という情報を得たことでした。「あまり気負わず、とりあえず六合目でも七合目でも、行くだけ行ってみよう」と思ったことで、かなり心理的なハードルが下がりました。「一度登ると気持ち的に富士山の見え方や存在が違ってくる」という言葉も背中を押してくれましたね。

そして、ラーメン屋さんでの作戦会議で、この登山計画と山小屋を伝授してくれた同級生! ほんと、頭が上がりません! ありがとう! 近いうちにご馳走します。もちろん、餃子も付けますよ。

2022年8月11日木曜日

ゆっくり富士登山 Day 2

午前3:00には出発!と意気込んでいたものの、2:30に窓を開けたら、ものすごいどしゃ降り。てんくらでは9:00まで登山指数Aになってるのに、雨雲レーダーは真っ赤。そもそも、前線があるのに、大気状態が不安定な山で天気を予想しろっていう方が無理があるのかも。「山は逃げない。今回は諦めて、のんびり温泉でも入って帰ろう」と決めて再び眠りました。

4:30、ふと目を覚ましたら、鳥の声。なんか青空も見える。これで予約していた山小屋に「天候不良で登頂を断念します」とキャンセルの連絡をしたら怒られそう。というわけで、とりあえず荷物をまとめ、六合目の安全指導センターに行って状況を聞いてみることにしました。

4:55、移動開始。山小屋からちょっと登って指導センターに到着。午前中に登頂できるなら、お天気は問題ナシとお墨付きをもらい、一安心。


星観荘で用意してもらった朝食用のお弁当をここで食べました。ちなみに、六合目には、指導センターがあるだけで、食べ物や飲み物を買う場所はありません。


5:40、本格的に登山開始です。案内板がとても詳しくてびっくり。

最初は、石がゴロゴロしてて、ちょっぴり歩きにくいなぁ…という感じのところを登っていきます。

緩やかな坂だけど、ズルズルっと滑るからちょっと登りにくい。ゲイターを使うと靴の中に小石が入るのを防げます。

それにしても、見事に整備されていますね。整備をしてくださった皆さんの「安全に登山を楽しんでね」という気持ちがひしひしと伝わってきます。

お花たちも健気に咲いて、登山の応援をしてくれています。こちらはオンタデさんたち。かなり上までいらっしゃいます。

これから登っていく道が見えています。うーん、あんまり考えないようにしよう(汗)。とにかく、目の前の一歩一歩を積み重ねていけば、いつか着くはず。


時折、霧に包まれると何も見えなくなります。


6:50。1つ目の山小屋「花小屋」さんに到着。


高山病のリスクを減らすため、かなりのゆっくりペースで登っています。こちらでコーヒーをいただきました。山頂までは、残り3.8km。標準コースタイムで295分。ええと…60で割ると、5時間弱ってことですね。

このあたりから、溶岩で登りにくいところが続きます。ストックが邪魔だったら、一旦仕舞って、両手を使ってガシガシ登るのもありです。


7:10、「日の出館」到着。登りの素敵なところは、ちょこちょこと山小屋があるところ。


山小屋では、本当にいろいろ売っているので、体力に自信がない人はお金で解決。無理して、自力で飲料を担いで登らず、手元にペットボトル1本分の水分だけ持って登るというのもアリだと思います。これは、他の山ではなかなかできないワザ。


7:20、「トモエ館」到着。ほぼ隣接してる感じですね。

気温は19℃。幸せすぎる!


さあ、頑張りましょう。山頂まで3.6km、283分。全然進んでなーい!(笑)

猫のゴロゴロは好きだけど、溶岩のゴロゴロは、ちょっとね…。

「七合目救護所」ですって。っていうか、なんかずっと七合目なんですけど!


7:32、「鎌岩館」到着。


なんか、オシャレ。

HOKAの登山靴履いてる人がいましたよ。

この辺まで来ると、完全に非日常な風景。


8:00、「鳥居荘」到着。

トイレはこんな感じになっていて、200円を入れてお借りします。山にこんなちょこちょこトイレがあるなんて、本当にびっくり!


8:15、「東洋館」到着。


引き続き登山道は岩・岩・岩。でも、ほら、よく見てくださいな。迷わないように黄色の矢印がいっぱい書いてあるし、手すりも付いています。山頂まで3.1km、255分。


8:44、ようやく八合目、「太子館」です。


9:00、八合目「蓬莱館」。


このあたりは、階段になっているところが多いです。山頂まで2.6km、189分。


たしか、このあたりで雷鳴が聞こえて、雨が降ってきました。カメラを仕舞ったので、しばらく写真はありません。怖いなと思うのは、コロナ感染防止のため、山小屋には宿泊客以外入れないというルールがあることです。

下の方の小屋のご主人は、「本当にひどい雷雨になって身の危険を感じる事態になったらトイレに逃げ込んで。さすがに、誰もそれを追い出したりはしないから」と言っていましたが、雷ゴロゴロ雨ザーザーの中、トイレでレインウエアを着ていたら、山小屋のおばちゃんが追い出しに来ました。

こういう時は、アメリカのチップ文化の出番。「登山道の保全などの寄付に使ってください」と言っておばちゃんにお金を握らせ、「今すぐ出ますからねー」と言いながら、もたもたとレインウエアを装着。「大変ですよねぇ…」と、おばちゃんの愚痴を聞きながら、時間を稼ぎます。完全装備で外に出たら、雨が弱くなっていました。作戦勝ち!(笑)

ほら、少し雲の隙間が明るくなっています。山頂まで2.4km、175分。

9:50、八合目「元祖室」。

10:30、本八合目「トモエ館」。海抜3,400m。雲の上ですねぇ。っていうか、八合目の次が本八合目って、なんだかなぁ(苦笑)。



さて、山頂まで1.2km、50分。本当に近づいてきました。右に登っていく人の列。左は下山する人の列です。ちょっと面白い光景。

そして、こんなところで健気に咲いているお花たちが! イワツメクサですかね。登頂することに必死で張り詰めていた心がフッと解けた瞬間です。

10:45、八号五勺「御来光館」。「五勺(ごしゃく)」って、ちょっとどうなのよ。九号目は、まだですかー?

おおっ、荷揚げしているブルドーザーが見えます。そうなんです。富士山って、こうやって荷物を運ぶためのルートがあるんです。

超高齢の登山者たちは、山小屋に荷物を送って、身ひとつで登るのだとか。ちなみに、最高齢は、なんと101歳! いろんな人の手を借りながらでも「登ろう!」と思った気持ちがすごい! 40代、50代、60代の人、まだまだ全然いけるっしょ(笑)

「未だ破られない、満101歳で富士登頂の記録」
https://news.1242.com/article/182706

11:10、九合目。意外だったのは、ここに山小屋がなかったこと(ちゃんと地図を見てなかった)。このあたりまで来ると、かなりの人が、息も絶え絶えという感じで、とても苦しそうに登っています。何歩か歩いてはしばらく休んでという状況。元気いっぱい登っていた若者たちも動けなくなって座り込んでいます。

そんな中、私はまったく息切れもせず、いつもどおりのペースで、スタスタと気持ちよく歩けました。六合目の星観荘に泊まって高所順応をしたおかげです。八合目から、かなりハイペースで歩いて、他の登山者の皆さんをごぼう抜き。少し指先に痺れを感じたので、一旦、座って深呼吸して、そのあとは、またゆっくり登りました。山頂まで400m、30分です。

11:29、残り200m。


11:55、鳥居が見えてきました。



12:00、吉田ルート山頂到着。

力尽きた人々が倒れています(笑)


今夜お世話になる山口屋さんにご挨拶して、荷物を置かせてもらい、お天気の状況を確認して、12:15、お鉢周りに出発! ザックがないから羽根が生えたように体が軽い。ちょっと走っちゃおっと♪


こちらは御殿場ルートと富士宮ルートの山頂。

いやぁ、こんな風景、見たことない!

12:50、富士山頂郵便局。しまった! 五合目で買った絵葉書と切手、ザックに入れて置いてきちゃった。さすがに戻るのはツラいので、山頂から投函するのは諦め。むむむ…。皆さん、山頂郵便局の消印をもらうためには、ここで出すのを忘れないようにしてくださいね。開いてないタイミングもあるので、切手は先に買っておくことをオススメします。

13:00、気象観測所。このあたり、砂利が滑ってかなり歩きにくいです。

うひょー! 圧巻!! 何だか月面にでも来ちゃった気分。


13:05、日本最高峰富士山剣ヶ峰到着。ここに立った時の気持ちは、ほんと、言葉では言い表せないですね。ただ、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて…。


さっ、走って帰りましょ。



ちなみに、今回の山行で、一番道迷いをしたのは、このお鉢周りでした(笑)。道を間違えたところで遭難するわけじゃないので、案内標識が少ない感じ。

14:00、山口屋さんに戻ってきました。お鉢周りの標準コースタイムがたしか1時間半なのに2時間近くかかっちゃった。写真撮ったり、道に迷ったりしていたので、走ったわりには時間かかったかな。

それにしても、山頂にこんな自販機があるなんて驚愕しちゃいますよね。400円~500円という感じです。決して高いとは思いません。荷揚げしてくださった方たちに感謝しながら、いっぱい買いました。ほんと、自分じゃ運べないって!


部屋はこんな感じです。お布団の中に寝袋が入れてあります。屋外も屋内も摂氏8度。自販機で温かいものを買って飲んで、自分の体温を上げて、寝袋に入っていると、温かくなってきます。

普通のホテルと違って、お湯をもらったりすることはできません。調理のためのガスとかも、全部下から荷揚げして届けてもらっているわけですからね。決して、サービスが悪いとかではなく、ここでは、それが普通なんです。なので、自販機に感謝!

17:00、夕飯。カレーです。



そして、なんと、19:00消灯(笑)。山小屋のお兄さんたちは、朝3時からお仕事なので、仕方ありません。防犯のため、全部施錠されるので、星空を見に外に出ることもできません。これは想定内。でも、大丈夫。星は午前3時に見られますからね。というわけで、おやすみなさい!

(つづく)