2020年8月5日水曜日

字幕翻訳作業についての細かい話

皆さま、こんにちは。ねこです。この間は、スポッティングまでのことを書いたので、今日はその続きを書きますね。スポッティングの次にする作業は、原文ウインドウへの原文の貼り付けです。その時に大活躍してくれるのが、ゲーミングマウス。8つのボタンに、こんな動作割り当てをしています。


まずは、動作割り当ての解説をしましょう。左クリック、右クリックは普通どおり。ここは特に設定を変えたりはしません。

左の親指で操作しやすい場所にコピーとペースト。これは何の作業をする時にも、よく使いますよね。字幕翻訳中に使う場面としては、原文にある単語を辞書に貼る時。あとは、原文の貼り付けで間違えた時の修正ですね。

人差し指を伸ばすと届く位置にPage DownとPage Up。これは、SSTのショートカットと連動させていて、Page Downで次の字幕に、Page Upで前の字幕に移動します。

スクロールボタンには、F12キー。これもSSTのショートカットと連動させていて、「現字幕の再生」を割り当てています。

そして、親指を遠くに伸ばしたところにEnter。これは、原文の貼り付けでは使いませんが、例えばGoogle検索をする際、検索バーのところにキーワードを貼り付け、親指でこのEnterを押すと、右手をマウスから離さずに検索ができます。その他、マウスから手を離してEnterを押す場面というのは、意外と多いので、なかなか使えます。

さて、具体的にどう原文の貼り付けを進めていくかですが、まずは、「台本ウインドウに原文が貼られている」という前提でスタートしますね。

1)中指で「現字幕の再生(F12)」を割り当てたキー(スクロールボタン)を押し、ハコ1つ分の音を聞きます。

2)それに該当する原文をマウスでドラッグし、台本ウインドウの左上にある「コピー」を押します。


3)アウト点を縮める必要がある場合は、マウスをアウト点付近に置いて、「←→」が表示された状態で、ちょっと左右に動かすと、アウト点をつかまえることができるので(ハコの一番右側が赤い線になってる状態)そこで、左手の小指を「Shift」キー、右手の人差し指を「←」キー、薬指を「→」キーに置いて、アウト点の調整をします。特にカット変わりがある時は要注意ですね。

4)アウト点の調整がない場合、あるいは、アウト点の調整が済んだら、マウスで「次の字幕に移動(Page Up)」を割り当てたボタンを押します。

あとは、1)から4)の繰り返し。会話が続いていてアウト点を縮める必要がなければ、マウスだけで作業ができちゃいます。

次に、実際の翻訳の手順とペースについて。私は、目の疲れや腰痛などを防止するために、「25分作業」→「5分休憩」→「25分作業」→「5分休憩」→「25分作業」→「5分休憩」→「25分作業」→「30分休憩」というサイクルで作業をすることにしています(「ポモドーロ・テクニック」という時間術です)

そして、自分で翻訳可能な字幕枚数に応じて、一応、こんな時間割を作ります。

10:00 字幕~20
10:30 字幕~40
11:00 字幕~60
11:30 字幕~80
12:00 ランチ
12:30 休憩(NHK語学)
13:00 字幕~100
13:30 字幕~120
14:00 字幕~140
14:30 字幕~160
15:00 休憩
15:30 字幕~180
16:00 字幕~200
16:30 字幕~220
17:00 字幕~240

25分で何枚訳せるかは、素材の種類によってかなり差はありますが、私の場合、込み入ったドキュメンタリーなどでは、25分間で15枚ぐらい、テンポのいいドラマでは25枚ぐらいです。これは、「そこそこ完成に近づけつつも、ハマりそうになったら保留」という完成度でのペースです。読解やリサーチで、どうしてもハマりそうになったら、そこは★印を付けて後回しにします。★印があまりに多くになってしまう場合は、一旦、作業を中断して、重点的にリサーチをしたり、ネイティブに質問を送ったりして、自分自身が内容を理解できている状態に持っていきます。

さて、実際にいつもこの勢いで訳しているかというと、実はそうでもないんですよね。ニャンコがパソコンに飛び乗ってきて、そのまま30分遊んじゃったり、休憩の5分を使ってストレッチをしている間に寝落ちしたり…と、日々、いろいろなトラブル(?)が起きます。なので、240枚まで終わると夜の9時や10時になっているということも、しばしば。ただ、本当に切羽詰まっている時は、このペースで訳すことは可能なので、1日に300枚訳すこともあります。

まあ、見積もりとしては、このペースで訳せる素材の場合、「1日あたりおおよそ200枚程度」として納期までの予定を立てます。23分程度の比較的訳し易い内容のテレビ番組で、字幕枚数が360枚だった場合、1日目はスポッティング+字幕160枚、2日目は字幕200枚。3日目に見直しとリライトをして正午に納品という感じ。

もちろん、最初からこんなペースで訳せていたわけではありません。ただ、長くやってるとやっぱり翻訳速度は上がっていくものなんですね。先日のJVTAのYouTubeでも言っていましたが、「字幕の型」ってあるなぁ…思います。「文章の構造がこうなってる時は、こう処理する」みたいなこともあるし、あとは、「原音とは全然違う言葉を使いながら全体をうまく言い換える場合の発想方法」などでしょうか。

このコツというかテクニックのようなものは、ドキュメンタリー番組やドラマの字幕をトコトン書き写してつかみました。前述のYouTubeの中で、おふたりが「写経」と言っていたものです。原音を聞きつつ、字幕を書き出していると、「あ~、そういう発想ですかぁ…」「へぇ、そうやって辻褄を合わせるんだぁ」と気づくことが山ほどあります。おそらく、そうやって身につけた「字幕の型」のおかげで、長年の間にちょっとずつペースアップできたんだろうなぁ…と思いました。

逆に言うと、「自分の字幕の型」にハマりすぎている可能性もあるので、あらためて「写経」に取り組んで、他の翻訳者さんたちの「字幕の型」をお裾分けしてもらおうかなと思っています。映画やドラマを見ていて、字幕の作り方(発想)が見事だと、感激してニヤニヤしちゃうことってあるんですよねぇ。よ~し、写経するぞ!

JVTA+(プラス)vol.20: 
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