2018年9月28日金曜日

字幕翻訳を徹底分析

皆さま、こんにちは。ねこです。
ねこが映像翻訳を学んだ学校が
このたび、字幕翻訳についての
電子書籍を出版しました!



ねこは、電子書籍の作り方の部分と
原稿の内容確認という部分で、
ほんの少し、この出版に
関わらせていただきました。

「完成しました」という連絡を受け、
原稿を持っているにもかかわらず、
思わず即買い!
いやはや、あらためて
普通の読者として読んでも
これが面白いのなんのって。

字幕のルールを
あまり知らない人は、
まずは第2章を読むだけでも、
かなり目からウロコかと思います。

「人物像に合った言葉選び」の
"It's an impossible situation"の
訳例なんて、サイコーですね。
ちょこっと、紹介してもいいかしら。

(女子高生)マジで無理なんだけど

(軍曹)抜き差しならぬ状況だ

いやぁ、こういうの見てると、
本当にワクワクします♪
(ヘンかしら? 笑)

実際にお仕事をしている
字幕翻訳者にとって
ものすごく勉強になるのは
第3章と第4章。

特に3.4以降で出てくる訳例には
本当にゾクゾクします。

原文
I am not asking you.

全訳
あなたにお願いしているのではない。(16文字)

字幕
これは命令だ(6文字)

ひゃーっ!! お見事!!!
字数がものすごく限られているから
否定文を肯定文に言い換えて
こんなにバシッと決めてます。
いやぁ、カッコいい。しびれます!

第4章での「省略」「言い換え」
「補足」「創造」の訳例と解説を
眺めているだけでも、
なんだか字幕が上手に訳せるように
なりそうな気がしてきます。

普段、字幕を訳している時に、
「あっ、これは省略がいいな」
「よし、ここは言い換えよう」などと
あまり意識はしていませんが、
こうして、あらためて
1つ1つのテクニックを眺めてみると
どれも普段から使っている手法です。
それらが見事に解説されています。

う~ん、でも、別の見方をすると
これは大変なことですね。
ここまで解説されてしまうと
「字幕翻訳は長年の経験と勘」と
悠長に構えている場合では
なくなってしまうかもしれません(汗)。

実際、この書籍の原稿チェックを
させていただいたあとは、
普段、自分が書いているものとは
違うタイプの字幕も
浮かんでくるようになりました。

というわけで、翻訳者の皆さんにとって
これは「諸刃の剣」とも言える
キケンな本ではないかと思います。

ベテラン翻訳者さんでも
今までどおりボーッと訳していたら、
あっという間に新人さんたちに
追い抜かれてしまうかもしれません。

トライアルになかなか受からず
悪戦苦闘をしている翻訳者さんには
大きなチャンスです。
これを読んで、ビビッときたら、
あっという間に翻訳力アップ!
ということもあるのかも。
(※効果には個人差があります:笑)

ねこ自身、ガイド業を始めてから
翻訳のお仕事をお断りすることが
増えてしまい、
字幕翻訳力の低下を
懸念している今日このごろ。
これをじっくり読み返して
精進しなくては!

11月末までは、
ガイド業で忙しくなりそうですが、
12月からは、比重を翻訳に戻し、
翻訳業:7、ガイド業:3で
やっていきたいと思っています。

だって、ほら、
「あなたにお願いしているのではない」(16文字)が
「これは命令だ」(6文字)ですよ。
このゾクゾク感を味わったら
絶対にやめられませんって!


ところで、今週末の9月30日にも
字幕翻訳のお話を
たっぷり聞ける機会があります。

【グローバルスキル 能力開発ラボ 2018】
3日目:9月30日(日)13時~開催
http://www.jvta.net/tyo/lab2018-panel-translation/

<トークセッション>
第一部
「イントロダクション:字幕翻訳の’仕組み’を解く
『字幕翻訳とは何か ~1枚の字幕に込められた技能と理論~』出版を記念して」

第二部
「肉じゃがをマカロニ&チーズと訳す理由(わけ)
~映像翻訳はどうやって文化の壁を飛び越えるのか~」

ねこも会場にお邪魔して、
客席に、ちょこんと座り、
「うは~、しびれるぅ!」
などと悶絶しながら、
トークセッションを聞く予定です。

バッグに、このバッヂを
つけていくつもりなので
よかったら話しかけてくださいね。


<本日のおまけ>
電子書籍の中で、
「おお~っ」と思った部分。
(自分用のメモ書きを兼ねて)

・1980年~90年代の字幕と2000年以降の字幕の比較してみると、男らしさや女らしさを強調する役割語が使われる頻度の違いは明らかである
・翻訳者も視聴者も従来のような現実とかけ離れた口調に違和感を覚えるようになった
・日本語字幕は、口調やトーンが反映されたリアルな会話・発話としての「話し言葉」と、文字で見て違和感のない「書き言葉」、その両方に配慮して作る

いやぁ、面白い。
マーカーを引いていったら、
電子書籍全体が
キラキラ&シマシマになっちゃうかも(笑)