2024年10月13日日曜日

【DJF特集16】ジャズとの向き合い方

皆さま、こんにちは。ねこです。DJF特集の最後に、ジャズとの向き合い方について書こうと思います。

ねこおじさんは学生時代、テナーサックスを吹いていました。ある時、「楽器では無理だけど、写真でならジャズの世界に入り込めるかも」と思い、ニューヨーク大学で写真を専攻。卒業後、ジャズのフォトジャーナリストになります。

そのままアメリカで暮らし、ジャズクラブに足繁く通い、日本に向けてニューヨークのジャズシーンの情報を発信。いつしか、ミュージシャンたちから、よく知られる存在になりました。

2016年には、母校のビッグバンド(慶應ライト)のメンバーたちがマリア・シュナイダーのクリニックを受けられるように話を持ちかけて実現します。

Photo by Tak Tokiwa

当時、遠征に行ったメンバーうち7人が、現在、プロのミュージシャンとして活躍しており、その1人の池本茂貴さん率いるislesは、今年7月27日の東京芸術劇場でマリア・シュナイダーさんと共演しました。同じくその時のメンバーだったのが、今回デトロイト・ジャズ・フェスティバル2回目の出演となった片山士駿さんです。

ねこおじさんは写真と執筆だけでなく、いつしか「人と人をつなぐ」という形でもジャズに関わるようになっていました。そして、DJFとの交流事業が始まります。

今回の交流事業に参加したThe Bop'sのリーダーである井上拓美くんが、現地でのパーティーのために準備していたスピーチがあるのですが、その中に、非常に印象的な言葉があったので、一部、ご紹介させていただきます。

(※文中に出てくるクリスというのは、デトロイト・ジャズ・フェスティバル代表のクリス・コリンズ氏のことです)

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クリスは私に「What is jazz - ジャズとは何なのか」を教えてくれました。ジャズとはアメリカを原点とする文化である。しかし、現代におけるジャズとは各地で様々な人が演奏して、その土地の文化を反映させた、その土地のジャズを作ることであると彼は言いました。それを聞いて衝撃を受けると同時に、私もそういう風にジャズと向き合いたいと思いました。

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古いジャズしか聴かないという人たちもいます。「昔はよかった」と言って、レコードから聞こえてくる音を慈しむことを否定はしません。でも、ジャズは今も元気いっぱい生きていて、世界各地で演奏されて、進化を続けています。

ねこおじさんと私は、演奏者ではないけれど、人と人とつなぐことで、ジャズを次の世代に伝えるために、何かちょっぴりでもお手伝いができればと願っています。


<皆さんの情報>

菊池ひみこ(鳥取ジャズ実行委員長)
https://www.instagram.com/kikuchihimiko/
https://open.spotify.com/intl-ja/artist/0sgqSYfiTwCyWvyFGnzCD9

片山士駿
https://www.instagram.com/shun_flute/

池本茂貴
https://www.instagram.com/ikechan_0312/
https://open.spotify.com/intl-ja/artist/4mcp4hM2RUQeEGQB3q8vD5

Maria Schneider
https://www.instagram.com/mariaschneiderorchestra/
https://open.spotify.com/intl-ja/artist/61bWkkCyCh1jSBmAKdC7sg

Detroit Jazz Festival
https://www.instagram.com/detroitjazzfest/

Takehiko Tak. Tokiwa(ねこおじさん)
https://www.instagram.com/taktokiwa/




2024年10月3日木曜日

【DJF特集15】鳥取のジャズをデトロイトへ

皆さま、こんにちは。ねこです。デトロイト・ジャズ・フェスティバル3日目、いよいよ鳥取の若手バンドThe Bop’sがWaterfrontステージに登場します。

The Bop’sは鳥取大学のジャズサークル「鳥取大学JAZZ&FUSION研究会」の学生バンド。メンバーは井上拓美くん(tp)、藤村建吾くん(pf)、國清晃生くん(b)、中祖真宇理くん(ds)、そして、都内でプロとして活躍中の片山士駿くん(fl)が、サポートメンバーとして一緒にステージに乗ります。

士駿くんは、ねこおじさんのうーんと後輩にあたるミュージシャンで、初めて会った時は、まだ慶應大の学生さんでした。その士駿くんが、みんなのお兄さん的存在として、ぐいぐい引っ張っていくなんて…ねえ。ほんと、感慨深いです(笑)。

さて、まずは午前中のリハーサル。このピリッとした空気感、写真からも伝わるでしょうか。

そんな中、サポートスタッフのTonさんは、どこへ行っても「Hey, Ton!」と声をかけられ、デトロイトの人気者です。和ませてくれて、ありがとね。

さあ、午後はいよいよ腹を括って本番です! メンバーは、なんと全員スーツ。いやぁ、カッコいい。

サウンドチェックでは、野外ステージの開放感のおかげもあってか、みんなどんどん笑顔になっていきました。

客席も少しずつ埋まっていきます。

あら、この人たち、ステージ上でセルフィー撮ってますよ(笑)

バンドの紹介のMCは、前日のセッションの取りまとめを担当してくれたChuck Newsomeさん。自身が鳥取ジャズに出演した時の思い出も語りながら、心のこもった紹介をしてくれました。

そして、リーダーの拓美くんが英語でご挨拶をし、演奏が始まります。

本当に気持ちよさそうなThe Bop’sのメンバー。「緊張」という言葉は、完全にどこかに置いてきたようで、「今」と「ここ」を存分に楽しんでいます。


鳥取から運んできたジャズがデトロイトの空気を震わせて観客の元へ。



そして、最後の1曲では、菊池ひみこさんが登場! 日本のシティポップの再燃で、今、世界から注目を集めているピアニストさんです。1999年に夫でギタリストの松本正嗣さんと鳥取へ移住。そこから地道に鳥取でジャズの種を蒔いてきました。


その種から芽が出て、すくすくと育ち、デトロイトのステージを飾れるまで成長したんですね。



終演後、「CDを買いたい」と、ステージに駆け寄ってきたご夫人がいました。


感想を話してくださったので、よかったら聞いてみてください。


こうして、The Bop'sのステージが無事、終わりました。


メンバーの皆さん、士駿くん、ひみこさん、ひみこさんのお嬢さん、サポートスタッフのTonさん、そして、この国際交流のために膨大なメールのやり取りを重ねてきたねこおじさん、本当にお疲れ様!

DJF特集は次回の投稿が最終回です。皆さんのジャズへの熱い想いについて、語っちゃおうと思っています。お楽しみに!


<本日のおまけ>
The Bop'sのお兄さん的存在として、サポートメンバーとして参加した片山士駿くんが、今日10月3日21:00からのEテレに登場します!

「生誕100年!映画音楽の革命児 ヘンリー・マンシーニ」
https://www.nhk.jp/p/classictv/ts/14LJN694JR/episode/te/M6XW9M31M2/
(※再放送は10月7日14:00から)

「えーっ、どこどこ? フルートなんていないじゃん!」と思うかもしれませんが、最前列のステージ中央に一番近い場所でサックスを吹いているのが士駿くんです。ねこおじさんと私は、士駿くんを自分たちの子どものように思っているので、今夜は本当に楽しみです!

2024年9月27日金曜日

【DJF特集14】ジャズで国際交流

皆さま、こんにちは。ねこです。デトロイト・ジャズ・フェスティバルの企画で、鳥取とデトロイトの若者たちが、実際にどんな交流をしたのか、ご報告しましょう。

鳥取からは15歳から25歳までの12人が参加。デトロイトからも12人(年齢はおおよそ同じくらい)が参加しました。フェスティバル2日目の9:30から、ホテルの会議室でのスチューデント・ミーティング兼リハーサル。午後13:15からが、Waterfront Stageでのセッションという日程です。

緊張してこの日を迎えた鳥取の皆さん。Chuck Newsome先生に言われて、なんとなくやってきたデトロイトの学生さんたち(笑)。まずは1人ずつ自己紹介をしていきますが、名前と楽器を言っておしまいという感じで、イマイチ盛り上がりに欠けています。


ところが、あら不思議! 曲の打ち合わせを始めたら、急にみんなの目つきが変わりました。




「言葉も文化も違う国に住んでても、ジャズの演り方は一緒なんだ!」と実感した瞬間ではないでしょうか。

音楽のおかげでグッと距離の縮まった若者たちは、鳥取県を紹介するパンフレットを見ながら話が弾んでいます。


スチューデント・ミーティング兼リハーサルは、最後にみんなで交代しながら「A列車で行こう」を演奏して終わりました。


さて、午後はいよいよ本番です。



はるばる海を越えてやってきた鳥取の若者たちの音と、この土地で練習を重ねてきた若者たちの音が、青空の下でブレンドされていきます。




双方にとって、とても貴重な経験になりましたね。


この交流事業のまとめ役を引き受けてくださったChuck Newsome先生(プロのギタリストで、ジャズ教育者でもある)が、後日、メールの中で、こんな言葉を書いていました。

These kids had quite an experience that will probably last a lifetime!
(これは、みんなにとって、一生忘れられない経験になったと思う)

もともと、この国際交流はホテルの会議室で、非公開セッションという形で実施する予定になっていました。しかし、DJF代表のChris Collins氏が8月1日に「セッションをステージでやってみてはどうか?」と提案をしてくれたことで、全員がDJFのステージに乗れることになったのです。

デトロイトの皆さん、素敵な思い出を本当に本当にありがとう! この日のことは、一生忘れませんよ。


<注目の若手アーティストたち>
今回、セッションに参加してくれた中に、将来、世界的なプレーヤーになりそうな若者が2人います。アルトサックスのカリルくんと、ピアノのジェイコブくん。なんと、どちらも15歳です。

Kahlil Childs
https://www.youtube.com/@Kahlil314

Jacob Hart
https://www.youtube.com/@jhartpiano1

ピアノのジェイコブくんは、近々、レコーディングをしてCDを作るとのことで、今、クラウドファンディングをやっています。
https://www.gofundme.com/f/help-jacob-create-his-jazz-masterpiece

彼が超有名なプレーヤーになったら、「私、ジェイコブ・ハートの1枚目のCD制作に協力してるのよ」と自慢できるかなと思って、ちゃっかり30ドル寄付してみました。Donate Nowというところを押すと、高めの金額の選択肢が出てきますが、金額を自分で入力できるので、少額からでも参加できます。よかったら♪

2024年9月25日水曜日

【DJF特集13】公式フォトグラファーのお仕事

皆さま、こんにちは。ねこです。デトロイト・ジャズ・フェスティバルのこと、あと数回、ブログをアップする予定です。今回は、ねこおじさんと私のお仕事について。

2018年から、2人でフェスティバルの公式フォトグラファーとして雇っていただくようになり、今回で5回目となりました。


「アメリカのジャズフェスティバルなのに、なぜ日本人が雇われるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらく事務局としては、「世界に向けて情報を発信する」「ジャズを通して国際交流をする」という考えがあるように思われます。

ニューヨーク在住のねこおじさんが、フォトジャーナリストとして初めてデトロイト・ジャズ・フェスティバルに行ったのは14年前。それから毎年、丁寧な取材をし、日本に向けて雑誌や書籍で情報を発信し続けたことで、フェスティバル事務局から注目されるようになりました。

その後、日本のジャズフェスティバルと提携をして、お互いにアーティストを派遣し合うという話が動き出し、ねこおじさんは、その交流事業の橋渡しも引き受けることになります。

交流事業のことはあらためて書くことにして、今回は公式フォトグラファーのお仕事についてお話ししましょう。実はこの業務、とんでもなく大変なんです(苦笑)。コンサートは毎年、3~4会場で行われるのですが、その全ステージの写真を撮らなくてはいけません。しかも、各会場で、いろいろな時間帯にVIPのスピーチがあり、それもすべて撮影することになっています。


なので、ねこおじさんは、毎朝、入念に撮影の順番と移動方法を検討し、分刻みのスケジュールを作成。どうしても時間が重なってしまう時や、ステージの進行が遅れて、何かの撮影が困難になった場合は私がカバーします。

一方、私のメインの業務は、会場全体の雰囲気や観客の様子がわかる写真の撮影、そして、スポンサー広告関係の撮影です。DJFには、莫大な資金を投じてくださるスポンサーがたくさんいらっしゃって、そのおかげで誰もが全ステージを無料で楽しめます。そのスポンサーさんたちに「うんうん、広告の効果はありそうだから、来年も出資しよう」と思ってもらえるように、広告と観客を絡めた写真を撮るのが私の仕事です。撮影リストは数ページに及びます。



フェスティバル期間中、レストランでゆっくり食事をする時間は取れないので、隙間の時間で、屋台のホットドッグやハンバーガーを買ってむしゃむしゃ食べます。


一日の撮影を終えると、私はひと足先に部屋に戻り、サンドイッチなどを囓りながら写真のセレクトと編集作業を開始。私が撮影する写真は主にSNS用なので、締め切りは翌朝です。

ねこおじさんが撮るステージ写真は、DJFの公式記録写真として末永く残されるので、撮影から10日以内に編集を済ませて納品という契約になっています。ただし、10~15枚はSNS用に翌朝納品します。

深夜のセッションの撮影を終えて、ねこおじさんが部屋に戻ってくるのは午前2時頃。その後、シャワーを浴び、数時間の仮眠を取ります。

私はねこおじさんのいびきをBGMに写真編集を続け、ベッドに入るのが午前4時か5時頃。そのタイミングで、ねこおじさんが起き出して、即納用の写真10~15枚のセレクトと編集に取りかかります。

7時頃に目を覚ますと、ちょうどねこおじさんが写真編集を終える頃なので、インスタントのお味噌汁を2人分作って、梅干しを食べ、カップヌードルを朝食にします。リハーサルなどがある場合は、8時か8時半頃にシャワーを浴び、9時前には部屋から出動。また分刻みの一日が始まります。

フェスティバル期間中、2人で同じ場所にいることは、ほとんどありません。でも、最終日の最後のコンサートだけは、一緒に聴くことに決めています。そして、フォトグラファー仲間と「See you next year!」と挨拶して、熱い4日間が終わります。

こんな過酷な現場なのに、まったく嫌にならないのは、毎年会うフェスティバルのスタッフたちのおかげです。かなりの少人数で仕事を回しているので、各自の負担はかなり大きいはずですが、それでも笑顔を絶やさず常に前向きなフェスティバルファミリー。



また来年も、みんなに会いたいから、過酷な4日間を乗り切れるように、黙々とジョギングを続けるねこおじさんと私なのでした。

次回のブログでは、いよいよジャズでの国際交流の様子をお伝えします。お楽しみに!