2023年4月14日金曜日

ChatGPTを翻訳支援に使ってみた

【重要な注意事項】ChatGPTに入力した文字列は、検索結果として利用される可能性があるため、公開前の映画やドラマの台本などの文字列を入力することは情報漏洩につながります。ご注意ください!

皆さま、こんにちは。ねこです。今、話題のChatGPT、どんな風に翻訳に役立てることができるのか少し試してみました。現段階で言えることは、アウトプットされたものが、どの程度正しいかを判断する力が必要ということです。

例えば、日英翻訳の場合、こんな風に使ってみました。まず、訳したい文章をChatGPTで英語に訳します。訳文を見ると、直訳的な部分や、英語で言うならこの表現はない方が自然かもといった部分があるので、それを自分なりに適切な英語に書き換えます。その後、その文章をChatGPTに"Edit the following sentence"とお願いして校正してもらいます。

これで、わりといい感じの英文にはなるのですが、完成度が高いと思っていたその文章をネイティブにチェックしてもらうと、単語のニュアンスなどで、さらに修正が必要なところがありました。例えば、温泉についての文章で「癒やしの」という日本語に引っ張られて、ChatGPTは"healing"という単語を使っていました。しかし、"healing"は宗教的なものやスピリチュアルなニュアンスが強いので“therapeutic”や“nutrient-rich”という単語を使った方が適切とのことです。

つまり、サイト翻訳にChatGPTを使って、出てきた英文を貼り付けて終了!という使い方は、現時点ではできません。「おおよその意味を把握できればいい」ということなら、Google翻訳同様、使える場面はたくさんあるかと思いますが、宣伝や広告に使ってしまうと、かなりイタイことになる可能性があることを認識しておいた方がよさそうです。

次に英日の字幕翻訳に使ったらどうなるかを試してみました。"To know and not to do is to not know"というセリフを日本語字幕にする試みです。こちらのスクリーンショット、拡大して見られるでしょうか?


日本語に訳すところまでは、なかなかの出来です。ただ、「18文字以内」という指示を出したら「知るだけ無知」というおかしな文字列を出してきました。そこで「16字から20字の日本語字幕に」という指示を出し直したところ「知るだけで行動せず、無知と同じ。」という回答が出てきました(句読点まで入れると16文字)。ちなみに、私が作った字幕は以下のとおりです。

知っていてやらないのは
知らないのと同じ(19文字)

字幕翻訳の場合、ChatGPTが役に立つのは、むしろリサーチ作業の方かもしれません。先日、3人のネイティブに相談しても、適切な回答が得られないフレーズがありました。"get new logos"という表現です。ネット検索でも納得できる解釈が見つからず、結局、その時は、翻訳エージェントの担当者さんが「これは新規顧客を獲得するという意味じゃないですか?」という情報をくださり、無事、適切な字幕を納品できました。しかし後日、その質問をChatGPTにしてみたら、わずか数秒で正しい解釈を提示してくれたのです。

ただ、驚くべき神回答をしてくれる時もあれば、お腹を抱えて笑ってしまうようなトンチンカンな回答をしてくる時もあります。「金色夜叉の要約を教えて」と質問したら、こんな回答が出てきました。


「尾崎紅葉が書いた小説の」という情報を補足しても、このとおり。


これならGoogle検索の方がよっぽど正確な情報にたどり着けますよね。というわけで、現時点では、使う人の判断力が重要です。ChatGPTは「すごく物知りだけど、ちょっと天然な友達」というぐらいに思って、全面的には信頼せず、うまく付き合っていくのがよさそうです。

それと、自分がネット上に置いている情報で、パスワードなどがかかっていないものは、ChatGPTの回答として利用されてしまう可能性があるので、文書ファイルのやり取りなどは、これまで以上に慎重に行う必要がありそうだということも付け加えておきますね。

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今回のブログは、これから映像翻訳を学ぶ方たちや、駆け出しの翻訳者さんたちへの応援の気持ちを込めて書きました。JVTAのメールマガジン1000号特別企画から、That's Interesting!を読みに来てくださった方、はじめまして! このブログでは、翻訳についてのことや、英語の学び方、海外でのお話などを中心に、さまざまな情報を発信しています。

2021年12月のブログに、字幕翻訳のお仕事に役に立ちそうな記事のリンクをたくさん載せてあるので、よかったら参考にしてくださいね。かなり古い記事もありますので、リンク切れなどはご容赦くださいませ。

翻訳関連記事のまとめ
https://interesting-languages.blogspot.com/2021/12/blog-post.html

また、近日中に「英語のプロは何をしてきたのか 2023」という電子書籍を出版します。その第3章「字幕翻訳者としての英語人生」で、字幕翻訳力を上げるために、どんなトレーニングをしてきたのかを紹介していますので、これは要チェックです♪

今、出版準備の最終段階なのですが、急遽、ChatGPTの情報なども追加することにしたので、4月18日頃に発売のご案内をしようと思っています。お楽しみに!

「英語のプロは何をしてきたのか 2023」

目次

はじめに

第1章 英語上達に向けて何をするか
 目標を決める
 英語環境を作る
 オーバーラッピング
 シャドーイング
 コピーイング
 単語を覚える
 NHKの語学講座を活用する
 ニュースを活用する
 海外ドラマや映画を活用する
 発音の基本を押さえる
 辞書を活用する
 英語学習用アプリを活用する
 ChatGPTを活用する

第2章 TOEIC対策
 準備編
 本番編

第3章 字幕翻訳者としての英語人生
 紆余曲折の英語人生
 日本映像翻訳アカデミーへ
 デビューから今まで

第4章 通訳案内士としての英語人生
 英語を話すのは大の苦手
 通訳案内士試験に再挑戦
 ガイド試験の受験対策
 合格してからのこと今やっていること

おわりに
巻末付録<こんなふうに聞こえるリスト>


※現在、Amazonでは、2015年に出版した「英語のプロは何をしてきたのか」と、これから出版する予定の「英語のプロは何をしてきたのか 2023」が表示されます。2023年版は予約注文ができる状態ですが、ChatGPTの情報を追加後、4月18日に正式にリリースのご案内をする予定です。予約注文をされる場合は、4月18日以降に再度、最新版のダウンロードをしていただくようお願いいたします。