2024年12月12日木曜日

字幕翻訳のお仕事のこと

皆さま、こんにちは。ねこです。今日は久しぶりに字幕翻訳のお話をしますね。

今、翻訳を担当している番組の第1話が、12月11日から期間限定で無料公開されています。

「ザ・密林生活 with エド・スタフォード」(ディスカバリーチャンネル)https://youtu.be/LE6hKeKIau8?si=ZH-T2gZCiH7OWgev

この番組を例に、どんな形で翻訳の仕事を受注し、どんなペースで作業をしているのかを、解説しようと思います。

全6話で1話が45分ほどの番組なのですが、今回、打診をいただいたのが11月13日のお昼過ぎでした。第1話の納期は、ちょっと急ぎ目とのことで、締め切りが11月19日の正午。若干、スケジュールはタイトだけれど、対応可能と判断して、第1話をお引き受けしました。

納期までに間に合うかどうかの判断は、最初のうちはなかなか難しいのですが、経験を積んでいくと、おおよその見積もりができるようになってきます。

私の場合、短いセリフが多いドラマやリアリティー番組なら、1日あたり15分、長いナレーションが続くドキュメンタリー番組なら、1日あたり10分ぐらい訳せるという計算で、所要時間を見積もります。

字幕を訳す作業の他に、字幕制作ソフトを使って、字幕を出す位置を決める「スポッティング」という作業もあります。私はセリフの始まるタイミングで、トントントン…と映像を切っていくやり方をするのですが、45分番組なら、作業時間は3~4時間(←かなり爆速です)。詳しいやり方を知りたい人は、こちらの記事をご参照ください。

爆速!字幕スポッティング
https://interesting-languages.blogspot.com/2020/07/subtitling.html

ちなみに、この第1話、字幕の枚数が887枚になりました。聞き慣れない表現かもしれませんが、字幕翻訳者は字幕を1枚、2枚…と数えます。

翻訳をする時は、タイマーをかけて25分訳したら5分休憩という形で作業を進めています。25分間で訳せる枚数が、おおよそ20枚。なので、例えば、こんな感じで1日のスケジュールを作ります。

9:00         字幕~20
9:30         字幕~40
10:00 字幕~60
10:30 休憩
11:00 字幕~80
11:30 字幕~100
12:00 昼食
12:30 休憩
13:00 字幕~120
13:30 字幕~140
14:00 字幕~160
14:30 字幕~180
15:00 休憩
15:30 字幕~200
16:00 字幕~220
16:30 字幕~240
17:00 字幕~260

ちなみに、260枚までいくと12分49秒まで訳せたことになるんですが、ここまで順調に作業が進む日は稀です(笑)。別件で急ぎの対応をしなくてはいけなくなったり、メールの返信に時間を取られたり、「ちょっと休憩」と思って、横になってストレッチをしていたら寝落ちしてしまったりと、いろいろなことが起きて、作業時間が夜までずれ込むこともしばしば。

なので、急ぎの案件でない場合は、「1日あたり10分訳せたらヨシとしましょう」ぐらいの気持ちでいます。ちなみに、あらゆることを放置して翻訳に全力投球すれば、1日20分ぐらい訳すことも一応可能です。

そんなわけで、通常のペースで作業する場合は、こんな日程になります。

1日目 スポッティングと字幕5分まで
2日目 字幕15分まで
3日目 字幕25分まで
4日目 字幕35分まで
5日目 字幕45分まで
6日目 リライト
7日目 最終調整と納品

納品をしたあと、チェッカーという字幕のチェックをする担当の人が、誤訳はないか、わかりにくい表現はないか、漢字表記の誤りはないかなどのチェックと修正をしてくれて、クライアントへの納品となります。

納期に余裕がある場合は、チェッカーから「この部分、再考してください」などと連絡が来て、翻訳者が字幕を修正することもあります。短納期の場合は、チェッカーに納品した時点で作業は終了になります。

45分番組を週に1本ずつ訳すことは可能で、シリーズ全話をお引き受けすることもありますが、翻訳以外にもちょこちょこ用事が入っている場合は、隔週で対応させていただくこともあります。今回の案件については翻訳者2人体制で、私が奇数話、もう1人の翻訳者さんが偶数話を担当しています。

今日のお話はここまで。せっかくなので、次回もこの番組の翻訳について、具体的な作業内容のことなどを書いてみましょうか。お楽しみに!