2016年9月20日火曜日

一人称・二人称をどう訳す?

皆さま、こんにちは。ねこです。
友人から、翻訳についての
面白い記事を見たと連絡がありました。

「ボルトの一人称は「俺」?「僕」? 
しっくりくるのは…… イメージ作る役割語の活用法」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160917-00000007-withnews-spo

これは、翻訳をする上で、
真っ先に考えなくてはならない
超重要事項です。

記事の中に挙げてあった
以下のようなイメージも、
大きな判断基準となっています。

「俺」:マッチョで男らしい・力強い・男性的
「僕」:おとなしい・知的・インテリ

その他、教授などの発言の場合は、
「私」を使ったり、
おじいさんの発言の場合は、
「ワシ」や「わし」を使うこともあります。

女性の場合は、「私」が多いですが、
本人のキャラクターを出すために
「あたし」という表現を使うこともあります。
母親が子どもに話しかけるセリフなら、
「私は」ではなく「おかあさんは○○だと思う」
などと訳す時もあります。

英語では、"I"というたった一文字の単語ですが、
日本語にする時は、かなりバリエーションがあるので、
状況によって使い分けることになるのです。

一人称の決め方についてですが、
例えば、著名人などで、
これまでに雑誌やサイトで、
コメントがたくさん訳されている場合は、
最も主流と思われる表現を使います。

判断を迷う時は、
「現在、一人称を“僕”としていますが
“俺”でも違和感はないので、
ご検討をお願いします」などの
申し送りをつけて納品します。

音楽CDの歌詞対訳などでは、
基本的にアルバム内で統一しますが、
ある曲は、草食系男子っぽい歌詞、
ある曲は、かなり肉食系という場合は、
曲の中だけで統一を図って、
アルバム全体としては、
「僕」と「俺」を混在させることもあります。
その場合も、必ず申し送りをつけます。

ドラマや映画の場合、
複数の翻訳者で訳すことが多いので、
訳しながら、ネット上で相談をし、
クラウドで人称表を共有します。

ドラマの場合は、二人称についても
決めておかなくてはいけないので、
こんなエクセルファイルを使います。

(※クリックすると大きくなります。
実際の呼び方と違っていたらごめんなさい)

ドラマの場合は、話す相手によって
一人称も変わる場合もあるので、
「上司に対して:私 妻に対して:俺」
などと定義することもあります。

以前、主な登場人物が20人以上いる
医療ドラマを訳した時は、
そもそも顔を見ても誰なのかわからず、
顔写真一覧を入れた人物相関図を作り、
さらには人称表を作り…という感じで、
翻訳の前段階だけでも、
かなりのエネルギーを要しました。

英語では"I"と"you"だけで済むのに、
日本語では、かなりの
バリエーションができるので、
驚きですよね。

そういえば、日本人と結婚した
アメリカ人女性が、英語では
"wife"という1つの単語だけなのに
日本語では「妻」「家内」
「奥さん」「奥様」「かみさん」など
訳語がいっぱいあって困ると
嘆いていたことがありました。

私たちは、これだけ複雑な
日本語という言語を
使いこなせているのだから、
"I" "you" "wife"だけの
シンプルな言語である英語を学ぶのは、
何だか簡単そうな気がしてきませんか?



<追記>
先日の危機管理についての記事は、
一部、不適切な内容がありましたので
削除しました。
翻訳者の皆様、ルールに則って、
いい原稿を納品していきましょう。