2020年6月2日火曜日

アメリカ人が作った日本人向け発音講座

皆さま、こんにちは。ねこです。先日、Zoomでジョシュア・ポペノ先生の発音矯正講座に参加しました。まずは、ポペノ先生について、簡単にご紹介しましょう。先生はニューヨーク在住のアメリカ人で、16年ほど日本で暮らし、声優として活動をされていました。日本人英語のクセや、その直し方を熟知しているため、その経験を生かし、現在はニューヨークで、日本人駐在員や留学生を対象に、グループレッスンやプライベートレッスンを行っています。

先日のZoom講座は、ニューヨークから生中継で行われました。土曜日の午前10:00から11:30(日本時間)まで、たっぷり1時間半。いわゆる英語発音の「肝」とも言える部分の解説です。参加者は約200人。音声は全員ミュートで参加し、顔を出すかどうかは自由選択。半数ほどの人が、画面をオンにし、鏡を片手に、一生懸命、口を動かしながら参加していました。こちらは、その時のスクリーンショットです。先生から許可をいただいて掲載しています。


いつも、苦手だなぁ…と思う母音が3つ勢揃い。意識しないと、ごちゃ混ぜになっちゃうんですよねぇ…。でも、不思議と先生の解説を聞きながら、真似して口を動かしていると、ちゃんと使い分けられそうな気がしてきます。

受講中、コメント欄で質問も受けつけていて、講座の最後に、1つ1つ丁寧に回答してくださいました。本当に有意義な1時間半でした。


…と、ここまでが先日のZoomセミナーの感想なのですが、本日のブログは、さらに続きます。実はポペノ先生との出会いは、2015年。ニューヨーク在住の友人の何人かが、先生のグループレッスンを受講していたので、面白そうだなと思い、プライベートレッスンを申し込みました。

私自身が大学時代に言語学を専攻していて、しかも字幕翻訳者だということから、その後、ポペノ先生から、発音矯正ビデオの字幕を訳す相談を受けました。実際に翻訳を始めると、いくつか迷いが出てきました。

通常の字幕翻訳の仕事では、映像を受け取って、その映像に合わせて字幕をつけていきます。しかし、ポペノ先生から送られてきたのは、収録に使う予定の英文原稿でした。当時、柔軟な考え方のできなかった私は大パニック! 「字幕というのは、見る人が読み切れるように1秒につき4文字ぐらいしか入れられないし、字幕を表示するタイミングも、いつも、30分の1秒まで細かく設定するので、これでは、ちゃんとした字幕を作れません」なんて言ってしまったり…。しかし「ちゃんと配慮して見やすい動画にするから信頼してほしい」と説得され、そのまま翻訳を続けることになりました。

もう1つの迷いは専門用語。例えば、母音の種類で "open, front vowel"というのを、どう訳したらいいか。言語学的には、これは「前舌広母音(まえじたひろぼいん)」といいます。なんかアヤシイ漢方薬の名前みたい(笑)。どういう表現を使うのがベストか、語学学習に熱心な友達に「A、B、Cのどれがいい?」とアンケートをとりました。

例文1)
/æ/ is an open, front vowel that you do not have in Japanese. 
A:/æ/は、「前舌広母音(まえじたひろぼいん)」といって、これは日本語にはない母音です。
B:/æ/は、「オープン・フロント母音」と言って、これは日本語にはない母音です。
C:/æ/は、開ける母音で、舌の位置は前です。これは日本語にはない母音です。

例文2)
Words like bead, first, rich, and moon are made with closed vowels. 
A:first、rich、moonなどの単語は、「狭母音(せまぼいん)」です。
B:first、rich、moonなどの単語は、「クローズ母音」です。
C:first、rich、moonなどの単語は、「閉じる母音」です。

結果は、Aが50%、Bが20%、Cが30%となったので、先生とも相談し、Aの専門用語を使うことになりました。「前舌広母音」「狭母音」などの言葉を初めて見ると、一瞬、「なんじゃそりゃ?」と思ってしまいますが、実際、漢字っていうのは、とても完結に意味を表してくれているんですよね。

なので、この講座を見始めて、「なんじゃそりゃ?」と思っちゃった人は、もうちょっと我慢して見続けてみてください。わりとすぐ慣れますから(笑)。

まあ、そんな感じで、英文のファイルを受け取っては、行間に日本語訳を書いて送るという作業が始まりました。当初、訳すファイルの総数は、母音と子音の数ぐらいかしら…と思っていたのですが、なんと、最終的に105本にもなりました(驚)。

イントロダクションだけで、こんなに!
(※拡大して見てくださいね)


母音はなんと…


まだまだ続いて…


全部で30本以上!

子音やリズム、連結の解説もあり…


私が重要視しているイヤー・トレーニングも5本。


このイヤー・トレーニングというのは、日本人がうまく使い分けることのできない2つの音を交互に聞いたり発音したりして、自分の耳を育てるというものです。私は今もこのビデオを使って、毎日練習しています。


そして、これまで学んだものを文章の中で練習するビデオもあります。


翻訳作業が終了したのは、かなり前で、その後、先生は、1本1本せっせと録画しては、1つ1つ丁寧に字幕をつけていったそうです。完成した講座を見た時には、本当に感激しました! 字幕のタイミングについても、当初、私はテレビや映画の業界スタンダードにこだわってしまったけれど、あら、普通に読めるじゃないですか。

講座がサブスクリプションで、月額3,000円と聞いた時も「今どきはYouTubeで何でも無料で見られるのに月額3,000円じゃ厳しいでしょう」と言ってしまったのですが、これだけのコンテンツに加えて、毎週土曜日に受講生専用のZoomセミナーがあるそうなので、それを考えると、安すぎなくらいだと思います。
(※宣伝料はいただいていませんよ:笑)

発音をもうちょっとなんとかしたいなぁ…と思いつつ、これまで特に何もしてこなかった方、よかったら、まずは月末に開催される無料のZoom講座に参加してみませんか? 次回は6月27日土曜日の午前10:00から11:30だそうです。

↓↓↓ こちらのリンクから申し込み可能です。
https://forms.gle/As2F4mLW2VhJeqGY6

毎月第4土曜日に無料セミナーを行う予定とのことなので、今回は都合が合わない方も、ポペノ先生のFacebookページのセミナー案内を見て参加してみてくださいね。

私は6月27日のセミナーに参加予定です。皆さま、ぜひZoomセミナーでお会いしましょう!

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