2020年6月14日日曜日

人はバーチャルツアーを楽しめるのか?

皆さま、こんにちは。ねこです。このたび、ToursByLocalsでバーチャルガイド・デビューをしました。現在、登録している4,617人のうち、バーチャルツアーを始めたのは43人。こちらがツアーの案内ページです。
https://www.toursbylocals.com/Live-Virtual-Tours

ツアーは大きく分けて2種類あって、実際にガイドが観光地から中継するものと、ガイドも自宅にいて、写真や動画などを使って観光地について語るものがあります。私は当初、春日部から日本人の暮らしを紹介するツアーを提供しようと思い、スマホのスタビライザー(映像が激しく上下するのを防ぐもの)を4月上旬に購入。早朝の春日部駅や神社を何度も何度も訪れ、何を見せるか吟味してツアーを組み立て、何度もリハーサルをしました。

しかし、ツアーを販売する以前の問題として、無料のテストツアーに参加してくれるお客様が見つかりません。まあ、考えてみれば無理もありませんよね。ローマやフィレンツェ、ニューヨークからの中継を見たい人はいるとしても、ローマやニューヨークから電車で1時間の郊外を中継で見たいというのは、よほど、その街に個人的に思い入れがある人だけでしょう。

そこで、頭を切り替えて、手持ちの都内写真を使って、自宅からバーチャルツアーを提供することにしました(※実際に浅草寺などを訪れて中継をするのは、移動時間や交通費を考えると、あまり現実的ではないので選択肢から外しました)。

そして、先日、ToursByLocalsの常連のお客様を相手に、テストツアーを実施。"Are Japanese people religious?"というテーマで、明治神宮と浅草寺をご案内しました。




写真を見せるだけでなく、場面に合った音も用意し、鳥居をくぐる、手水舎でお清めをする、二礼二拍手をする、絵馬に願い事を書く、おみくじをひくなどのアクティビティーも取り入れました。

1時間のツアーが終わったあとは、しばし放心状態。隣の部屋にいた母は、「あちらの方、随分、楽しそうに笑っていたわね」と言ってくれたけれど、心の中に妙な違和感が残っていました。翌日、父にツアーのPowerPointを見せていたところ、20分を過ぎたところで「お客さん、『長すぎる』って言ってなかった?」と。父はツアーの半分も見ないうちに飽きてしまったようです。そこでハッとしました。

“通訳案内士として前向きに行動して、みんなを勇気づけたい”という気持ちで、ここ数か月かけて、バーチャルツアーのことを考えてきたけれど、ひょっとして、バーチャルツアーなんて、全然面白くないのかも…。ガイドの仲間に相談してみたところ、やはり、皆、いろいろな場面で「オンライン疲れ」を感じていて、「結局、旅行はバーチャルよりは、リアルな近場が人気になるだろうね」という話になりました。

ただ、珍しい建築物の内部を案内するバーチャルツアーは、かなり人気とのこと。また、お客様相手ではなく、海外の旅行会社を相手に下見のためのバーチャルツアーをする(実際に観光地やホテルなどに出向いて、スマホを使って様子を伝える)というのは、ニーズがあるかもという話になりました。

バーチャルツアーを実際にやってみて感じたのは、ある種の「虚しさ」でした。飽きさせないようにと思って、アクティビティーをいろいろ取り入れてみたものの、結局のところ、無理して大人に「観光ごっこ」をさせてしまっていたわけです。

ふと、相田みつをさんの言葉を思い出しました。

   トマトがトマトであるかぎりそれはほんもの
   トマトをメロンに見せようとするからにせのもとなる

「実際に行った気分になれる」というのを目指して変な努力をするから、余計に虚しくなってしまう。でも、最初から「写真を使って、すごく面白い説明をする」ということにフォーカスしたら、全然違うものになるかもしれません。

実際、写真の展示会「CP+」では、毎年、著名な写真家さんたちが、絶妙なトークで来場者を釘付けにします。それを見習って、観光地の写真を使ったトークで、海の向こうで暮らす人たちを笑わせたり感心させたりすることを目指せばいいのかもしれません。もちろんガイディングの知識も必要だけれど、それ以上に、トークのスキルを上げる必要がありそうです。

また、一般的な旅行者と対象とするよりも、何らかの専門的な知識やマニアックな情報を求めている人を対象にした方がニーズがありそうなので、写真マニア向けに都内撮影スポットについて解説したり、初めて東京を訪れる予定の人に公共交通の使い方などを解説したりという形で、情報提供型のセッションを提供してみてもいいのかもしれません。

…と、ここまで頑張って前向きにブログを書いてきましたが、本音を言うと、今は完全に翻訳の方に心が傾いてしまっています。しかも、たった今、観光業について「オンラインやバーチャルだけでは物足りないはず」という文章を目にしてしまい、すべて投げ出したくなってしまいました。

でも、こうして壁にぶち当たるというのは、何かのチャンスなんだ!という確かな予感があります。翻訳、写真、英語、風景、旅…。頭の中でキーワードがぐるぐるしています。5年後、10年後、振り返った時に、「今思うと、あそこでつまづいたのが最大の転機でした」と言ってそうな予感。

今、字幕翻訳の仕事の中で、旅を満喫しています。車で、バイクで、世界のあちこちを走り、登場人物の気持ちになりきってセリフを訳しています。続きを訳すのが楽しみで、毎朝、ワクワクしながら飛び起きます。

また、Route 66をシカゴからロスまで走った時の写真のレタッチ作業を最近やりはじめ、(自分自身の思い出なので当たり前ですが)ものすごくワクワクしています。


人はどうしてワクワクするのか? そこを突き詰めていくと、何かヒントがあるのかもしれません。「写真や映像では満足できない」わけではなくて、「写真や映像が人を楽しませる」場面は世の中に溢れています。ひょっとしたら、これまで撮りためた写真で何か面白いことができるかもしれません。

とりあえず、一昨日のJVTA(日本映像翻訳アカデミー)のメルマガで紹介されていた本でも読んでみようかしら。何かいいヒントが見つかりますように♪
https://www.jvta.net/tyo/beautiful-%EF%BD%8Dessage/