2016年7月18日月曜日

字幕の落とし穴

皆さま、こんにちは。ねこです。
いつもは翻訳をしていますが、
珍しく翻訳チェックのお仕事を
いただきました。

ねこ自身も、まだまだ未熟なのですが、
字幕翻訳で気をつけておきたいポイントを
少しまとめてみようと思います。
字幕翻訳者の皆さんは、
ぜひ、参考にしてください。

翻訳者じゃない皆さんは、
「翻訳者って大変ねぇ…」と
同情してください(笑)

では、間違いチェック、スタートです!
今回は「朝日新聞の用語の手引」指定、
中黒は半角ということでチェックしてください。
(※画像をクリックして拡大してくださいね)

(問1)

(問2)

(問3)

(問4)

(問5)

(問6)

全6問ですが、実はミスが8か所あります。
以下、解答です。

(問1)
楽しんんで → 楽しんで

(問2)
2行目の最後に余計な改行が入っています。
(何度も字幕を書き直しているうちに
いつの間にか入ってしまう改行です。
よくよく見ると、字幕ウインドウの
カーソルの位置でわかります)

(問3)
2つめの「ニ」がカタカナではなく
漢数字の「二」になっています。
(よく見ると、若干、高さが違います)

(問4)
最初のダブルクォーテーションだけ
斜体処理ができていません。
(あとからダブルクォーテーションを足すと
こういうことが起きます)

(問5)
中黒「・」が半角ではなく全角になっています。

また、ディズニーの公式サイトでは、
「ウオルト」ではなく「ウォルト」です。

(問6)
事 → こと
(朝日の指定では、ひらがなです)

また「!」のあとに、
不要な全角スペースがあります。
(字幕ウインドウの
カーソルの位置でわかります)

いやはや、ウンザリしちゃいますよね。
でも、実はこれらのミスを
見つけ出す方法があるのです。

まず、翻訳作業が終わったら、
全字幕をエクセルにエクスポートしましょう。


この時点で、ダブルクォーテーションが
何だかおかしいのが
わかるかと思います。
(斜体+ダブルクォーテーションというのは
それほど頻出しないので、
意識して見れば、すぐ確認できます)

次に字幕の列だけを選んで、
テキストに貼り付けます。
(半角のダブルクォーテーションは
エクセルからコピーする時点で
勝手についてしまうので無視で)


ほら、こうやって見ると、
余計な改行が入っているのが
一目でわかりますよね。

ちょっと注意深く見ると、
最後の「!」のあとの
余計なスペースも発見できます。

そして、この文字列をWordに
貼り付けてください。


はい、赤のニョロニョロが出ました!
明らかな誤字脱字は、
かなりの確率で発見できます。

そして、これはなかなか難しいのですが
「パニーニ」も見た目で
何となく違和感が…。

48ポイントまで
拡大してみましょう。


こうして見ると、
全然違う文字ですね。

全角の中黒が混ざっていないかは
Ctrl+Hで全角の中黒「・」を探し出し、
半角の中黒「・」に置き換えます。

「ウォルト・ディズニー」については、
なかなか発見が難しいのですが、
例えば、Word上で
固有名詞をすべてハイライトし、
確認が済んだものから、
ハイライトを消していくという
確認方法が取れるかと思います。

「こと/事」などについては、
慣れないうちは、
G1右下のウインドウに、
要注意項目を並べておくと
いいかと思います。

例えば、最近手がけた案件では、
指定語彙の中で、
自分が迷いそうなものを
ピックアップして、
こんなふうに記入しておきました。

あと、あいつ、いす、要る、ウソ、完ぺき、聴く、ヵ月、頃、子ども、しかたない、~すぎ、すばらしい、すべて、ダメ、つらい、どなる、時、何で、辺り、方が、ハッキリ、ピッタリ、1人、独り身、~風、本当、マネ、ムダ、無理、全く、分かる

いかがでしたか?
少しは役に立つ情報が
ありましたか?

2年ほど前に
時短のための裏ワザを
記事にしているので、
よかったら、こちらも
参考にしてくださいね。

字幕翻訳修業と裏ワザ
http://interesting-languages.blogspot.jp/2013/09/blog-post_30.html

裏ワザ補足説明
http://interesting-languages.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html

そして、最後に気持ちの面のお話を。
ねこ自身、字幕翻訳を始めてから数年は、
ただただ納期に追われ、
まるで夏休みの宿題を
無理やり提出するかのような気持ちで
翻訳に取りくんでいました。

実際のところ、クライアントや翻訳エージェントを
「敵」のように感じていました。
納品後は、「もう知らなーい」とばかりに
家から逃げ出して、
メールを見なかったこともあります(汗)。

でも、ある時から、映像を作った人も
翻訳エージェントも、
一緒に作品を作る仲間なんだと考るようになり、
そのあたりから仕事もコンスタントに
入ってくるようになりました。

そして、あまり興味の持てない映像でも、
楽しめるポイントを無理やり探しています。
スーツを着た真面目そうなおじさんが
会計報告を読み上げるだけの映像でも、
そのおじさんの私生活を勝手に想像して
楽しんでしまいます。
(実際、そのおじさんが定年退職した時は
何だか寂しく感じました)

時短ワザなどを駆使しながら、
楽しく、愛のある翻訳をしていきましょう!