2014年11月24日月曜日

翻訳者と自動翻訳の取説

皆さま、こんにちは。ねこです。
今日は、これまで翻訳者として
なかなか言えなかったことを
思い切って書いてみようと思います。

仲良しのXちゃんが、
すばらしい機会を提供してくれたので、
ご本人の了解を取って、書いています。
そして、もしこれを読んで、
不快に感じる人がいたら、ごめんなさい。
でも、誰かを責めたりとかしているわけではなく、
役に立つ情報を提供したいという一心で、
愛を込めて書きます!

前半では、翻訳者に
翻訳依頼をする場合について解説をします。
後半では、自動翻訳サイトを
上手に使う方法を解説します。


さて、ある日のこと、仲良しのXちゃんから
LINEメッセージが来ました。
外国人宛てのお礼状を英文で書いたので、
これで意味が通じるかどうか添削してほしい
という内容です。

まず、ここで1つ、重要なポイント。
翻訳者に翻訳や添削を依頼する場合は、
「こういうのをお願いする場合、
いくらかかるもの?」と、
一応、料金を尋ねてあげてください。

もちろん、Xちゃんをはじめ、
翻訳や添削の相談をしてくる人は、
あとで何らかのお礼をしようと
思ってくれている場合がほとんどなのですが、
翻訳者は、友人からのこの手の依頼に、
軽く戸惑いを覚えます。

例えば、友人がパン屋さんをやっていたとして、
お店に行って、「このパンちょうだい」とは
普通は言わないかと思います。
しかし、翻訳みたいなものは、
目に見える「商品」があるわけではないので、
つい、「ああ、あの人、英語ができるから、聞いてみよう」
と軽い気持ちで相談してしまう人が少なくありません。

イラストレーターの友人に、
「ササッと似顔絵描いてほしいんだけど」と言ったり、
ミュージシャンの友人に
「パーティーでちょっと1曲だけタダで演奏して」
と言ったりするのも、
実は相手はけっこう戸惑っていたりするものです。

フォトグラファーに「撮った写真のデータをちょうだい」
と言うのもNG。
でも、フォトグラファーが写真データを無料でくれた場合は、
「SNSで使ってもいいですか?」などと確認の上で、
使えることは多いかと思います。
(でも、紙媒体に印刷するとしたら、おそらくそれは別料金)

皆、それぞれ、機材や楽器などにお金をかけているし、
技術を身につけるまでに、膨大な投資をしているので、
それを「無料」だと思ってはいけないのです。

「ご飯をおごる」という形でのお礼というのも、
サービスを提供する側が
「じゃあ、飯おごって」というのはOK。
でも、サービスを受ける側から「ご飯おごるから翻訳して」
と言ってOKかどうかは、
それまでの人間関係によるかなと思います。

で、実際、翻訳料というのが
いくらぐらいなのかというと、
ねこの場合、日本語を英語にする場合は、
1文字あたり6.25円(400字で2,500円)、
英単語1ワードあたり14円
(=日本語400字で約2,000円)です。

友人からの依頼の場合は、その3割引です。
初回の依頼で、400字以内なら、
「普段お世話になってるから、タダでいいよ~」
と無料にすることもけっこうあります。
結婚式などお祝いごと絡みの翻訳も、
お祝いの気持ちとして、無料にします。
災害時の連絡の翻訳も無料でやります。
そんな感じです。

さて、Xちゃんの話に戻りましょう。
今回、Xちゃんは、ねこに負担をかけたくない
という思いから、
英文を作ってから連絡をくれました。

ここがもう1つのポイント。
翻訳者にとって、最もラクなのは、
次のどれでしょうか?

1)訳した英文だけもらう
2)訳した英文ともとの日本語をもらう
3)日本語だけもらう

正解は3)です。
ぶっちゃけ翻訳者にとっては、
最初から自分で訳すのが一番楽なんです。

2)の場合は、英文と和文を照らし合わせながら
チェックをして、できるだけ
本人が書いた単語を残しつつ、
意味のとおる英語になるように、
試行錯誤しなくてはいけません。

3)の場合は、まず、その英文から、
もとの日本語を想像して、
そこから英文に訳すという作業になります。

もちろん、英語を勉強しているので、
自分の力で書いてみたい、
でも、それで通じるかわからないから、
チェックしてほしいという人もいます。
その気持ちも、ものすご~くわかります!!
なので、その場合は、2)でお願いします。
懇切丁寧に、どこがいけないのか
解説も添えて返します。

さて、今回のXちゃんは、1)のパターンでした。
「まあ、大好きなXちゃんが書いた英文じゃあしゃあない、
頑張って添削したるで~」と思って読み始めたものの、
途中まで読んだら…

ん~~~~~?
さっぱりわけのわからない英文が出てきました。

"It became a thing clogged up with a lot of memories."

なんだなんだ??
「それは~になった」
「詰まった」(←主に配管とかの詰まり)
「たくさんの思い出」

はは~ん、
「たくさんの思い出がつまった」って文章ですね、
これはきっと(笑)。

ここで、XちゃんにLINEで話しかけます。
「ねえ、Xちゃん、あれって、
1つ1つ、辞書引いて書いた?
それとも、Google翻訳とか使った?」

「あっ、実はところどころYahoo!翻訳を…」
とXちゃん。

やっぱりね。

そこで、もとの日本語が
どんな文章だったのかを尋ねると、

「思い出がたくさん詰まったものになりました」

なるほど!

さあ、ここからが3つめのポイント。
自動翻訳を上手に使う方法です。
Xちゃんの書いた日本語は、
極めて日本語的な文章で、
コンピューター翻訳向きではありません。
なので、まず、日本語自体を書き直してみるのです。

「Xちゃん、まずこの話の中で、
実際に行動をしたのは誰かしら?」
「私」
「1人だけ?」
「あっ、私たち」
「そうだよね。じゃあ、私たちが思い出をどうしたの?」
「思い出を…手に入れた」
「そうそう!」
「いっぱい? ちょっと?」
「いっぱい」
「どんな思い出? いい思い出? 悪い思い出?」
「いい思い出」
「じゃあ、それを文章にしてみようか」

「私たちはたくさんのいい思い出を手に入れました」

これをYahoo翻訳で英文にすると、
こうなりました。

"We obtained many good memories."

うん。悪くない。
でも、動詞がちょっと堅苦しいので、
再び、Xちゃんに質問します。

「手に入れるってもうちょっと簡単な単語あったよね。
gから始まるやつ」
「get」
「そうそう。その過去形は?」
「got」

"We got many good memories."

この文章なら、Xちゃん自身にも
きちんと理解できるし、
自然な英語ではなくても、
ネイティブにも気持ちが伝わるかと思います。

というわけで、ここで2つ大事なことがわかります。
1つは、自動翻訳を使う場合は、
主語、動詞、目的語などが
はっきりわかる英語的な構造の和文を作ることです。

そして、もう1つは、
実は自分で文章を組み立てたほうが
結果的には人間らしい文章を作れるということ。
Xちゃんは、「思い出がたくさん詰まったものになりました」
という文章を英語にしようとしたから、
ああ、これはもうお手上げ!と思って
Yahoo!翻訳に頼ったけれど、
「私たちはたくさんのいい思い出を手に入れました」
という文章を英語にするんだったら、
自力+辞書でなんとかなったのではないかと思います。

さて、とても長い投稿になりましたが、
今日は翻訳者と自動翻訳の取説を
書かせていただきました。

Xちゃん、ネタになることを同意してくれてありがとう!
おかげで、これまでずっと
心に溜めていたことを書くことができました。
感謝!