2014年11月4日火曜日

戸田奈津子語録

皆さま、こんにちは。ねこです。
昨日、字幕翻訳家、戸田奈津子さんの
講演とトークセッションに行ってきました。

とても力強い語り口。
すべてをひたむきな努力でつかみ取ってきた
情熱の人という印象でした。
「努力」とか「情熱」というものが、
ともするとカッコ悪いと思われがちな世の中だけれど、
でも、そんなことはない!
情熱的な人は本当にカッコいい!
そう思わせてくれたすばらしい講演と
トークセッションでした。

会場でたくさんメモを取ったので、
その一部をご紹介します。

話がどんどん展開する中での
メモの抜粋なので、
これだけでは意味がわからない部分も
あるかもしれませんが、
戸田さんの情熱的な講演の雰囲気を
少しでも感じていただけたら幸いです。

ねこ自身、特に印象に残った言葉に
アンダーラインを引いておきました。

*** 以下、戸田さん語録 ***

字幕の翻訳では英語はスタートライン。
あとは日本語力。
(4分の3は日本語力)

日本で字幕版が人気のある理由は、
本物の声を聞きたいという本物志向と
識字率の高さが挙げられる。

日本語は字幕に適した言語。
漢字は瞬時に意味がわかる。
漢字とひらがなの強弱というビジュアルな美しさがある。

終戦からずっと、
日本人は「英語を学ばなくちゃ」と思い続けている。
でも、日本語の教育がおろそかになってはいけない。
言語は国民のアイデンティティー。

字幕でも、難しい漢字や表現は、
使ってはいけないと言われる。
微妙なニュアンスの違いを表現できる
豊かな日本語がなくなっていく。
これは絶対に日本人として許しちゃダメ!

わからなかったら辞書を引くべき。
「若者にはわからないだろうから」という
親切心は害である。
すばらしい日本語を維持すべき。

日本語力をつけるには、
いい文学作品を読むしかない。

生きていく上で重要なことを教えてくれたのは
映画ではなく本だった。
英語は受け身。本は頭で考え、
イマジネーションを使うから身につく。

情報は教養ではない!
情報はコンピューターから得ることができるが、
教養はコンピューターからは得られない。

無から何かを作り出す
クリエイティビティーが大事!

昔は、DVDなどなかったので、
映画を見るというのはワンチャンス。
これっきりという切ないほどの想いで
1本1本を真剣に見た。

どんな口調を選ぶべきかは、
映画がメッセージをくれる。

いろんな人の意見を聞いていい。
いろんな本を読んでいい。
でも、最後の決断は自分で下すこと。
人のせいにしない。

睡眠時間は削らない。
最低7時間は確保している。
仕事で大切なのは集中力。

文字を持たない文明は死んだ。
活字の力が文明を作る。

絵文字がないと感情が伝わらないと思うのは
単に文章力がないから。

洋書を読むときに、辞書を引いてはいけない。
読んでいるなかで、何度も出てきて、
キーワードになっているものだけ調べる。

語学を学ぶのに近道はない。
日々の努力しかない。

英語学習の秘訣は、
・4技能のバランスが大事
・語彙を覚えること
・文章の組み立てを学ぶこと
・毎日ワンセンテンス書くだけでもいい
・好きな内容の英語を題材にする
 (料理など、自分で興味があること)

英語一辺倒である必要はない。
英語が不要な人だっている。
むしろ、日本語に力を入れてもいい。

言語は世界の鏡。
どの言語も、どちらも変わり続けている。

昔の名画をぜひ見てほしい。
途中で邪魔が入らない環境で、
1本を最初から最後まできちんと見る。

*** 語録、ここまで ***

ここからは、書き出した語録について、
いくつか、ねこ自身のコメントを書きます。

「漢字とひらがなの強弱というビジュアルな美しさ」
漠然と感じてはいたものの、
具体的に言葉でそう表現されるのを聞いて、ハッとし、
ますます字幕というものが好きになりました。

「すばらしい日本語を維持すべき」
本当に心に響きました。
翻訳の仕事でも、このブログでも、
豊かな日本語表現を使うよう
心がけていきたいと思います。

「日本語力をつけるには、
いい文学作品を読むしかない」
トークセッションの中で、
日本文学としては、以下の2作品が紹介されました。

枕草子―付現代語訳 (上巻) (角川ソフィア文庫 (SP32))

山椒魚 (新潮文庫)

枕草子は、千年前の作品であるにも関わらず
現代の女性と同じ感覚を持ったエッセイで、
非常に美しい日本語で書かれているとのこと。
とても読んでみたくなりました。

「情報は教養ではない!」
この言葉にも、本当にハッとさせられました。
コンピューターと人間の違いは、
そうか、そこだったのか!
と気づかせてもらったひと言でした。

「仕事で大切なのは集中力」
これは、日々、反省です。

「絵文字がないと感情が伝わらないと思うのは
単に文章力がないから」
絵文字や顔文字なしで、どれだけ気持ちを
伝えられるだろうかと、
あらためて考えさせられました。
このブログでも、友人とのメールやLINEでも
顔文字はかなり多用してきました。

もちろん、すべてNGということではないけれど、
顔文字に頼らずに気持ちを伝えるというのは
翻訳者として、試してみる価値があるのでは
と感じています。

(笑) ←これは場合によっては、
使ってもいいかなと思っていますが、
どうでしょうね。

「言語は世界の鏡」
翻訳をしながら日々感じていることが
この言葉に集約されていると思いました。
ただ文字をそのまま訳すだけでなく、
文化の違いや時代にも配慮しながら、
読み手に違和感を与えない表現を
探し続けていきたいと思います。


「戸田奈津子さん、字幕人生や俳優との交遊語る」(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20141103-OYT1T50072.html
※読売新聞とYOMIURI ONLINEに、昨日の記事が掲載されていました。


<本日のおまけ>
昨日は戸田さんの講演会のあと、
ブルーノート東京で、
ジャズピアニストの穐吉敏子さんと
シンガーのMonday満ちるさんの
親子デュオを聴いてきました。
穐吉さんは、なんと今、84歳!
まったく年齢を感じさせない
パワフルな演奏に驚愕しました。
いやはや、人生はまだまだこれからですね。
頑張ります!