2015年6月17日水曜日

引きこもらない翻訳術

皆さま、こんにちは。ねこです。
今日の内容は、映像翻訳者向けです。
なので、ところどころ、何の説明もなく
専門用語が出てきたりもしますが、
他のお仕事にも応用できることも
あるかと思いますので、
よかったら、翻訳者以外の方も
読んでみてくださいね。


翻訳学校でひととおり学び終え、
トライアルに合格し、
仕事が入ってくるようになると、
まずは、1回1回の納品に
精一杯という状況になります。

慣れていないため、1つ1つの作業に
時間がかかる上に、
時間の見積もりもうまくできないので、
1~2時間外出することすら、
ためらうこともあるかもしれません。

まあ、最初は誰でもそんな感じです。
できるだけ、各作業にかかる時間を
メモしておきましょう。
それを繰り返すうちに、
10分のドキュメンタリー素材なら、
ハコ切りの所要時間が何分で、
1人あたり何枚の字幕を訳せるか
という目安が見えてきます。

時間の見積もりができれば、
少しずつ、お出かけも
できるようになってきます。

ちなみに、ねこは、最初の1年ぐらいは、
週1回のペースで
30分の素材を納品するために、
四六時中、翻訳で頭がいっぱい
という状況でした。

今は尺や納期がさまざまな素材を
3~5件ぐらい
掛け持ちしているのが普通です。

時間の見積もりができれば、
どのくらいの分量を引き受けて
大丈夫かも分かるので、
掛け持ちが可能になってきます。
(最初は、そんなことができるなんて
夢にも思いませんでしたが…)

仕事が軌道に乗り始めると、
それはそれで、常に手元に
翻訳がある状態になり
引きこもり翻訳者になりがちです。
これは、心にも体にもよくありません。
何とかして、外に出ましょう!

1つの方法としては、
ノートPCとモバイルWiFiの活用です。
電車でもカフェでも図書館でも
仕事ができます。

ただし、ノートPCを持ち歩く以上、
万が一のトラブルに備えて、
必ずデータのバックアップを
取っておくのを忘れずに。

特に飛行機に乗る場合や、
海外に行く場合などは、
念のため、訳しかけのファイルを
信頼できる人に預けておくなどの
対策をしておくと安心です。

Dropboxに「作業中」というフォルダを作り、
そこに訳しかけのファイルと、
担当者の連絡先(メールアドレス)を書いた
メモ帳を入れ、
誰かと共有しておくのもいいかもしれません。

万が一、PCが壊れた、
ネットがつながらないという
事態に陥った場合も、
とりあえず、電話で指示をして、
訳しかけのファイルを送ることができます。

まあ、訳しかけで送るなんていうのは、
本当に不即の事態なんですが、
それでも、60分の素材を
50分まで訳し終えているSDBがあるのと
まったくゼロの状態とでは
エージェント側のダメージが違いますよね。

もう1つ、ノートPCではなく、
スマホやタブレットを
活用する方法があります。

今回は、以前訳した素材で、
すでにネット上で公開されているものを使って
ご説明しましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=E0q5KpNv48c
(※こちらは字幕付きの完パケ映像です)

まず、ハコ切りと原文のコピペまでは
自宅でSST G1を使って済ませます。
そして、「字幕番号」「原文」「最高(文字数)」を
エクセルにエクスポートします。

すると、こんな感じになりますよね。


これを、Evernoteにコピペします。


スマホのEvernoteアプリで開き、
制限文字数を考えつつ、
仮の訳を書いていきます。


話者が男性か女性か、
ナレーションのですます調か、
インタビューのカジュアル口調か
などという部分については、
事前に、*などの記号を入れて、
区別ができるようにしておくというのも
1つの方法です。

しかし、間違わないでいただきたいのは、
これは、電車の中や待ち時間などに、
少しでも作業を進めておくための
「仮訳」だということです。

実際にG1を使って、
字幕を映像に貼り付けていくと、
かなりの修正は必要になってきます。
映像を見ずに訳した字幕が
そのまま使えるなんて
思ってはいけません!

それでも、映像のない状態で、
一度、真剣に文字と向き合っているので、
この修正の段階で、
かなり字幕の質が上がります。

慣れないうちは、文字数は気にせず、
まずは、すべてベタ訳をするというのも
アリだと思います。
いきなり字幕にするよりも、
一旦、ベタ訳を作ることで、
全体の流れなども見え、
字幕がまとめやすくなります。

ところで、世の中に出回っていない映像や
文章を訳す場合は、一応、Evernoteは使わず、
Kindle HDにケーブルでWordデータを移して、
オフライン状態で持ち歩くようにしています。
そして、外出先で訳し、帰宅したあと、
再びケーブルを使ってPCに戻します。

スマホやタブレットのいいところは、
立ったままでも翻訳ができることです。
電車の中、人を待っている時など、
ちょっとした隙間時間にも訳せます。

何だか“心にゆとりのない人”
という感じがするかもしれませんが、
逆に言えば、移動時間などを
有効活用するからこそ、
ちゃんと人と会う時間なども
確保できるということです。

それと、電車で降りる直前まで訳していると、
慌てて降りて忘れ物をするので、
降りる1駅前になったら、
端末はきちんとしまって、
車内広告をザッと眺めます。
そうすれば、こんなかわいい写真を
うっかり見逃す危険も防げます(笑)


運動不足を防ぐために、
映像の内容を録音して、
歩きながら聞くという方法もあります。
一字一句、正確に聞き取れなくても、
何度か繰り返して全体を聞くと、
大きな流れが見えてきます。

すでにYouTube上に存在している動画なら、
こちらのサイトからMP3を作ることができます。
http://www.youtube-mp3.org/jp

世の中に出ていない映像の場合は、
普通にスマホで録音して
持ち歩けばOKです。

そして、最後に1つ、大事なこと。
ITなどを駆使して、効率を上げていきながらも、
1つ1つの素材と納品先への愛情だけは
決して忘れてはいけません!

実は、ねこは、最初の数年、
それがうまくできていませんでした。
常に“夏休み最終日の宿題状態”で、
とにかく形にして納品することで必死。
納品相手を自分の“敵”のように
思ってしまいがちだったのです。

いつごろからか、その心の持ち方が
変わっていくにつれて、
お仕事の依頼が増えてきました。
今もまだまだ足りない部分は
多々あるかと思いますが、
以前と比べれば、チェックをする人の
気持ちを考えられるようになってきたかな
という気がしています。
(あ、いや、まだまだですよね。
すみません、頑張ります!)

そして、1つ1つの映像や文章を
それを作った人の気持ちになって訳していくと、
夏休みの宿題状態から
抜け出せるようになってきます。

訳し終えた時に、“納品しちゃうのが
何だか寂しいなぁ…”と思えたら、
その翻訳はわりとうまく
仕上がっているのではないかと思います。

ああだこうだと書いている間に、
いつもお世話になっているエージェントから
新たに3本の映像を受注しました。
ありがとうございます。
精いっぱい、愛情を込めて訳しますね!


<本日のおまけ>
これまでに書いた翻訳関連の記事を
まとめたページがあります。
http://interesting-languages.blogspot.jp/2014/10/blog-post_26.html

特に「字幕翻訳修業と裏ワザ」と
http://interesting-languages.blogspot.jp/2013/09/blog-post_30.html
「裏ワザ補足説明」では、
http://interesting-languages.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html
デュアルモニターや8ボタンマウスの導入、
超高速ハコ切りの技などを紹介しています。
ぜひ、時短のためにご活用くださいませ。